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英雄は死なないのNMのネタバレレビュー・内容・結末

英雄は死なない(2019年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

ジョアキムが街を歩いていると、いきなり「ゾアン!」と呼ぶ男がいた。
「人殺し!お前は死んでいる!大勢を殺したあと、83年8月21日に殺されたんだ!」と。

わけがわからないがその日はまさにジョアキムの誕生日だったので気にかかる。
すると銃で撃たれた時の様子が詳細にフラッシュバックした。
自分はそのゾアンの生まれ変わりなのだろうか。自分はもう死んでいるのだろうか。一体。

その日から彼は夜中意思に反して歩いたり、目覚めると腕に覚えのないキリル文字が書かれていたり不思議な事象が起きる。
ジャーナリストの友人であるアリスがその文字を読んでくれた。
それは虐殺のあったボスニアの町の名前。
彼女はセルビア出身だし取材したこともある。
二人と更に撮影助手二人(ポールとヴィルジニ)とでボスニアへ向かうことになった。

しかしセルビアでは十人に一人がゾラン。
長らくボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の続いた地域であり、さらに突然よそ者が行ってこんな話をしたところで誰からも信用など得られない。
取材は難航。

アリスは全てがジョアキムの作り話ではと疑う。
ジョアキムは持病があり余命宣告された時期まで間もないので、自分の伝記を撮らせるためにみんなを動員したのではと。
ジョアキムが生まれたのは内戦の十年後であることも疑問点。

諦めたアリスは人を雇い、山奥にニセの墓を作らせ映画として成立させることに。
そのなんの変哲もない墓を見たジョアキムは、何も明らかにならないことに落胆。まだ詳細を知りたいと更に考え込む。

アリスが何度も取材に行った女性宅へジョアキムと尋ねると、外を眺めていたジョアキムは「前に来たことがある」と言い出す。
ゾランを知っているかと聞いてみると、ある50代の男の父親かもしれないと教えてくれた。

翌日向かう一行。
ジョアキムはその中年男性にいきなり「お前の父親だよ」と言って抱きついてしまう。もちろん追い返された。

その帰り、道に迷いつつ進むとある古びたトタン小屋を見つけた。
ジョアキムはここが自分の家だと感じた。
扉を叩くと、高齢の女性が出てきた。
目が見えない様子で、ジョアキムの胸や顔を手で触って確認した。
二人はおずおずと抱き合った。
女性はすっかり笑顔になり、ジョアキムを家へ入れてくれた。

額に入ったゾアンの写真を見たジョアキムははっきりと記憶が蘇った。
女性はゾアンの思い出を語る。男っぷりが良く神々しいほどだったと。もうあなたが死ぬのを見たくないと。
ジョアキムは彼女と口づけを交わし、一行は帰路に向かうのだった。


彼らが全員夢でも見ているような、幻想的な話。何も証拠がないので確信を持って取材を進められないのも話を面白くしている。

取材するアリスはとても行動力があり、実質この旅行を押し進めたり止めようとしたり自分のシナリオで進めようとしたりと、けっこうジョアキムよりもストーリー展開の中心にいる人物だった。

色彩がとても綺麗。ジョアキムたちの部屋の青い壁紙。二人の傘のコントラスト。トタン小屋の光と影、雑貨も美的。
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