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奥様は妊娠中のtetsuのレビュー・感想・評価

奥様は妊娠中(2019年製作の映画)
4.2
オンライン映画祭"マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル"にて鑑賞。
(本作を含む長編作品は、アマプラ、U-NEXTなどで配信中。)


[あらすじ]

人気ピアニスト・クレールと、その夫でマネージャーでもあるフレデリック。
仕事一筋の妻とは裏腹に、子供を望むフレデリックは、故意に避妊薬を甘味料にへと入れかえて、念願の父親になることを喜ぶが……。


[感想]

あらすじからも、お察しのとおり、その導入ゆえに、賛否が別れている本作。

全編に渡って、夫の暴走具合が半端ではなく、この展開を軽快なブラックコメディとして、割りきれるかどうかというのが大きな論点とはなりそうですが、テンポよく進んでいく物語や楽しい音楽といった演出のレベルは高く、結論も意外な部分に落ち着くため、個人的には、興味深い作品だと思いました。
(導入の展開が苦手な方は、全体を通して、主人公の能天気さにイラつきを覚えると思います。そのため、あまり、オススメはしません……。)

子供への執着ゆえに、着々と出産の準備を進め、勝手に赤ちゃん教室にまで通っい(しかも、そこのママたちと仲良くなったりする。笑)、妻の食べ合わせを指摘する、滑稽を越えて、狡猾にさえ見えてくる自分主体の主人公。

一方、ピアノ一筋で、それ以外のことは夫に頼りきってしまい、自分で大切な決断を出来ない妻。

本作では夫の暴走具合が目立ってしまいますが、私生活の大部分を身勝手な夫に任せきってしまう妻の描写も適度に挟んでいるため、ヤバイ夫への皮肉だけでなく、彼の言われるがままになってしまう妻の弱さにも疑問を投げかけているのがポイント。

普通の作品であれば、勧善懲悪や夫の変化を描きそうな題材でありながら、あえて、そうしない辛口な結論は、女性監督ならではの視点だと思いました。

映像としてはソフトながらもフランス映画ならではの生々しい下ネタも登場し、好き嫌いは、かなり分かれそうな本作。

フランス実写版『シティ・ハンター』の監督・フィリップ・ラショーさん辺りの、悪ふざけおバカコメディが好きな人はハマりそうな、出産ブラックコメディでした。
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