es

犬っころのesのレビュー・感想・評価

犬っころ(2019年製作の映画)
3.8
保護施設の野良犬を映しながら
難民問題を示唆する作品。
批判の色を強めるために構図や構成がしっかりと計算されている。この短篇を撮るためにどれくらいの時間カメラを回したのか気になる。

餌場に群がる犬達を俯瞰的に捉えた構図が印象的だった。一目散に近場の餌箱に群がる犬。密を避けて餌箱を変えていく渡り歩く犬。空いている場所をなんとか探そうと必死になる後から来た犬。自分の縄張りを主張する為に周りの者たち押し除ける犬。
保護施設という言葉は優しそうに聞こえるが、実際は人間に害を加えない為に監視の行き届く場所に追いやったもの。最終的に殺処分が待っているような施設であれば、ナチスがユダヤ人にした事と変わらない。人間は今でも人ではないと判断したものに対して同様に残酷な行為を行なっている。

人類の進化の過程と攻撃性の話を思い出した。肉食動物は捕食の為に牙や爪などの武器を用いる。草食動物は自身の身の安全を守る為に武器を用いる。攻撃力が弱い動物ほど攻撃行為に際限がなく「安全」を感じられるまで攻撃し続けるというもの。
そういう意味では、人間は脳が発達したが故に分別を持たずに自然界の頂点に立ってしまった恐ろしい生き物なのだと思う。人間が分別を得るための唯一の道は、歴史から学び続ける事。そんな事を考えさせられる作品だった。
es

es