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マダムのNMのレビュー・感想・評価

マダム(2019年製作の映画)
3.5
マダムは今でこそ優しくてかわいいおばあちゃん。部屋は質の良い家具に囲まれている。
カメラを回す青年は仲の良い孫。
二人の半生の貴重な記録。


祖母は息子にも孫にも男らしくあることを求めた。
孫は自分は他の男とは違うことを認識していたのでそれを必死に隠してきた。自分を騙そうとした。

マダムは女性らしく育てられ、両親は学問を許さなかった。
元美容師、コルセット会社を立ち上げ、錚々たる顧客を抱え莫大な利益を上げた。
彼女の資産を目当てに寄ってきた男性と成り行きで結婚、家長となった。
数年後離婚。子どものためますます働いた。
しばらくして今度はある事業家と本当の恋に落ちたが相手からの尊重がなく結実はしなかった。
会社を辞め今度は飲食に着手。ここでも客層に恵まれた。

孫のほうは、若い頃から友情と恋愛の重畳が多かった。
気になる人と親友になり、恋に発展するのがいつものコース。
彼女は別にいた。証明のためであり自分を騙すためでもあった。
同性愛のことは父に隠したまま。
映画を学びたかったがそれを抑え法学部に入った。
しかし様々なストレスで体調を崩す。

初めて男性と関係を結ぶと、ついに生きている実感を得た。
両親にカミングアウトすると父はショックで泣き崩れた。母はそれほど驚かなかったようだ。
85歳の父の心を傷つけたことに罪悪感を感じた。
祖母もしばらく無視した。
告白したことで改めて差別や権利の問題をとらえ直し討論会を開催、両親は出席してくれた。

祖母も徐々に無視をやめた。孫を愛していることに変わりはなかった。
本を執筆し話題になるとそれを喜んでくれた

いま祖母は仕事を引退し、恋の機会にはあまり恵まれなかったものの悪い思い出はなく、家族を愛し、絵や詩の世界に没頭している。
孫も今は、心も体も自由になったことを感じている。
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