鹿伏

ウォンカとチョコレート工場のはじまりの鹿伏のレビュー・感想・評価

3.7

「夢をみることからすべてがはじまる」

シャラメ×ミュージカル!
これは明らかに宣伝の仕方が意地悪というか、あのチャーリーとチョコレート工場の前日譚!って大々的に言われたら、いやまったくの嘘ってわけじゃないんだけどやっぱりティム・バートン版の映画を思い浮かべるじゃん。原作のタイトルは「チョコレート工場の秘密」なんだから、それに触れて“原作の前日譚”と明らかにしとかなきゃさすがに不親切でしょ〜〜だった

フラミンゴはなぜ逃げないかの理由に「リードするフラミンゴがいないからね」の解答はまさしくウォンカの存在そのものだった。ミセス・クラビットのもとで厳しい労働を強いられ、夢を見ることすら諦めた人々(たとえばチョコレートなんて食べなきゃよかった、ない生活が耐えられないと嘆いたヌードルの)たち対して「夢をみることからすべてがはじまる」と説くウォンカは、自らが夢をみることを諦めないことで先頭のフラミンゴの役目を果たす

大好きなサリー・ホーキンスの遺したチョコレートが美味しくなる秘密も、あの地下に秘密裏に貯蔵されたチョコレートを分け与える場面、そしてその光景を見てずっとひとりで抱えていた形見をみんなで分け合うところでハッとさせられるし、そもそもチョコレート自体がカカオ生産現場の厳しい労働環境に支えられているもので、公平・公正に分け与えること自体が取り組みとして行われているフェアトレードに持っていこうとする流れもあって、児童文学的啓蒙を含ませてるな〜〜〜だった。原作だとそれからウォンカは人間不信になっちゃってよい雇い主ではなくなるけど

人間兵器にもなり得る魔術師シャラメ。魔法のチョコレートをなぜウォンカが作れるかとか、そういうリアリティラインはまったく必要ないとは思ってるけど、なるだけ考えがそこに及ばないように ミュージカルでゴリ押ししてるな〜など。人間を風船のように浮かせられるチョコをひとりで大量生産できるの、完全に兵器寄りでしょ。最初に歌いはじめたときに(これまさかミュージカルの比重が大きいのか?)と思ってたら想像の倍くらい歌ってた。歌って踊れるシャラメ、最高だね。NSLのことは本当に軽率だと思うし、本人に意図がまったくなかったとしてもオファーを考えなしに引き受ける俳優だと知って、なおかつその後でなんの声明も出さずにふつうに活動してる(興行収入が伸びそうだからって来日もぜんぜんしてる)事実にかなりドン引きはしてるけど…
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