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ウォンカとチョコレート工場のはじまりのumisodachiのレビュー・感想・評価

4.6


『パディントン』シリーズのポール・キング監督が描く『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚。

魔法のチョコレート職人ウォンカは、チョコレートの町にやってきた。亡き母との約束を果たすため、自分の店を構えるのが彼の夢。しかし、その町は悪徳チョコレート職人たちに牛耳られており、聖職者や警察も彼らに買収されていた。罠に嵌められたウォンカは監禁されてしまうのだが……。

極上のファンタジー!!ティム・バートン版の『チャーリーとチョコレート工場』のような毒気はほとんどなく、ファンタジー好きが求めるすべてが詰まっているといってもいいほどの完璧なファンタジームービーに仕上がっていた。さらに、かなりゴリゴリのミュージカル映画でもある。

ロンドンのような、パリのような、ミラノのような”ヨーロッパの町”で、ドゥオーモのような場所に店を構えることを目標にするウォンカ。とても純粋で、悪意には鈍感で。つかみどころがないけれど、とにかく茶目っ気と行動力は天下一品。そんな素敵な青年を、ハリウッド1素敵な青年であるティモシー・シャラメが演じている。360度隙がないビジュアルに、どんなにファンタジックな背景にも負けない存在感は天晴。有名コメディアンや一流英国スターたちがクセの強い演技で脇を固めるが、彼らすべてを凌駕して有り余るほどの魅力を放っていた。

本作の中でチョコはスウィーツというよりもドラッグに近く、社会全体を支配してしまうほどパワフルなアイテム。それが、本作にある唯一の毒気といってもいいかもしれない。チョコはすべての人間を惹きつけ、すべての人間を狂わせてしまうほど強烈なものとして描かれている。

とはいえ、そこを深堀するわけではなく、物語自体は「幸せは分け合うもの」という極めてストレートな着地点を見出して、感動的に終わる。ヒュー・グラント演じるウンパルンパも限られた出演シーンながら美味しいところをかっさらっていて、全体としてとてもバランスが良い。子どもから大人まで楽しめる良作だった。

ちなみに私は吹替で観たのだが、ウォンカ役の声を担当している花村想太がめちゃくちゃ上手かった。意外と低い声の持ち主のティモシー・シャラメ本人よりもウォンカのビジュアルに合っている声なのが意外な効果をもたらしていることに加えて、おそらくティモシー・シャラメよりも数段歌唱力が高いので、ミュージカル映画としては吹替版の方が出来が良いんじゃないかと思われる。どのナンバーもすごく広がりがある歌い方をしていて最高。とういわかで、ミュージカルファンには吹替版の鑑賞をおすすめしたい。

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