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暗くなるまでこの恋をのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

暗くなるまでこの恋を(1969年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

 「変な所で変な出会い方っ!」と思わずにはいられなかった。会ってもいない女性と文通のみを交わし、会ったその日を婚約日にしてしまう早急さからついていけず。

 従来の古典的な映画文法に則りつつもひねりが加えられているのだが、そのツイストする部分がヘンテコなのだ。ついつっこみたくなる。そこジャンプカットなんだとか(冒頭の車移動)、そこのカットちょっと長くない?とか(悪夢にうなされるところ)、そこアップなんだとか。そのうち幾つかは伏線と回収されるんだが、伏線らしき違和感として際立っているので、まぁなんとなくは展開は読める。なんかサブリミナルみたいな表現もあったような。

 そのツイスト具合に作家のフェティッシュを見出すことはできるだろう。特に、マリオン(ドヌーヴ)に裏切られたマエ(ベルモンド)が、彼女の白いレースばかりを破って火に焼べる映像のクローズアップはまさにそれだった。

 また、情事へと続く前のやりとりがウィットで、窓の扉を閉めて「こんな昼間っから?」みたいなので察せられるし、ルイがマリオンの下着隠してそれが発端になるというのがなんかリアル。そこは、流石フランスっぽいなと思った。それと同じで、男女の会話劇の切り返しの異様な長さにも、この二人の絡みに重点があるんだという作家の主張を感じる(おのろけ具合に耐えられない部分もあったけども)。

 無駄な壁よじ登り!ベルモンドはわりとスタントを自らこなしており、彼が亡くなった際にはtwitterで、崖を転がる石とともに転げ落ちるスタントをこなした映像も回ってきた(「華麗なる大泥棒」)。そしてそんなスタントマンの肉体は無駄に今作でも発揮される。4、5階に住んでいるマリオンの家に不法侵入するのだが、階段も使わずいきなり壁をよじ登り始める。地面からスタートしワンカットであることからも、落ちたら怪我じゃ済まないのがわかる。この緊張感よ。ちなみに向かいにはマリオンがいるホステスがあり、そこにはドアマンもいて、いくら夜とはいえ堂々と壁よじのぼっているのを何もできないドアマンも異常ではある。
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