ネノメタル

黄龍の村のネノメタルのネタバレレビュー・内容・結末

黄龍の村(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「映像のパンクス」ここに降臨す

10/2、第七藝術劇場にてとうとうこの不思議な村で繰り広げられる阪元裕吾 監督、海道力也、大坂健太両氏による舞台挨拶付きでここで繰り広げられる「事件」を目撃した。
Twitter界隈でもまるでポスターのキャッチコピーにあるが如く「これ、映画界の決まりやから。」と箝口令が敷かれてるかのように一切のコンテンツに関する話題がシャットアウトされているこの『黄龍の村』。
現在大ヒット中の同監督の作品『ベイビーわるきゅーれ』でも顕著だった時折見せる登場人物達の自然な台詞回しとは相反してただただ共存する「この村の決まり」と称されるこの狂った設定が織りなすコントラストとの連続にただただ手に汗握り固唾を飲んで見守る66分である。
というか本作が僅か66分しか経過していないという事実がもはや驚愕過ぎるのだ。
それほどこの中詰め込まれている情報量が多すぎるもの。
何せ観ていくうちに当初の陽キャたちのウェイ系青春BBQ恋愛ハレンチストーリーみたいな序盤(自分でも何書いてるかわからんくなってきたぞw)から、彼らの乗っている車がパンクした辺りからいきなり雲行き怪しくなって血塗&殺害シーンが連続する「血みどろの怪奇ホラー映画」に変貌し、あれよあれよとそこからいきなり突如「ミッション達成アクションもの映画」へと映画ジャンルが大変身したりするし、もうこれは映画作品3本ぐらい梯子したような感覚すらあるのだから。舞台挨拶後、出演者の海道力也氏も仰ってたがこれは二度以上見て確認するべき価値があるめちゃめちゃカオスティックなまでに濃い内容が込められていると思う。あと本編中秘境の村なのに海道氏はやたらスポーティな衣装を着てたんだけどあれは迷い込んでいた人の衣装を剥ぎ取ってたかららしいね、って言うネタバレレビューならではの本人からお聞きした逸話もここに記しておくとして。
しかも我々は『ベイビーわるきゅーれ』の他にも『ある用務員』など阪元監督作品の死へのハードルが限りなく低いのを実感してるからこそ、鑑賞中における「スクリーン上の主役だろうが脇役だろうが敵役だろうがヒロインだろうがことごとくここにいる連中の何をしでかすかわからない感」は異常である。
正に本作は「映画鑑賞」などという甘っちょろい表現に収まらず「事件」を目撃してるかのようだ。
そして更に阪元祐悟監督の凄い点は『黄龍の村』も「ベイビーわるきゅーれ』もバイオレンスありきの同ジャンルに振り分けられそうなのに、どっちが良い等比較レベルじゃなく、同じ人の作品と気づかれない位全く別の空気をまとってる点。

両作共に3Dガンだかアサルトライフルとマシンガンだかぐらいの差はあるがそれらの放つ殺傷力は同じみたいなそんな質感すらある。
だからTwitter界隈でもポツポツ「私は『ベイビー〜』よりもこっち『黄龍の村』の方が好き派」みたいな意見も散見されるのも頷ける、ゆくゆくはファン・コミュニティが『ベイビー』派と『黄龍』派とで個別に分かれたりして。

そして10/24(日)満を持してシネマート心斎橋にて2回目!
初回時はあの得体の知れぬビジュアルポスターのイメージの織りなす物語展開がどうなるか神経尖らせて観るのが精一杯だったが、今回は登場人物達へ向ける視点を自分なりにシフトチェンジしたりと「答え合わせ」を楽しんだ。

『カメラを止めるな』『スペシャルアクターズ』など二回以上観てもギミック的に面白い作品は星の数ほどあるが本作ほどガラッと印象の変わる作品は極めてレア。

最後に、日頃、映画、音楽、演劇などのエンタメにどこか生ぬるさを感じているなら迷わず本作を観るべき、いわば「映像のパンクス」とでも形容すべきステイタスを有する作品であると断言しよう。
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