ambiorix

K.G.F:CHAPTER 2のambiorixのレビュー・感想・評価

K.G.F:CHAPTER 2(2022年製作の映画)
3.3
前作の『K.G.F: CHAPTER 1』に引き続いて鑑賞。本来なら「ロッキー兄貴!ロッキー兄貴!」かなんか叫びながら拳を突き上げたいところなんだけど、なんだろうな、自分でもびっくりするぐらい感想が思い浮かばないままズルズル2日が経過してしまった。でもって、俺って人間はつくづくギャング映画やマフィア映画が苦手なんだな、ということを改めて思い知らされる体験でもあった(ちなみにこのジャンルの私的オールタイムベストは『狼は天使の匂い』と『アイリッシュマン』)。
1作目がインドのスラム街に生まれた天涯孤独の少年がヤクザになり、なんやかんやあったあげく民衆たちの承認を得て「王」になっていく話なんだとしたら、続く本作『K.G.F: CHAPTER 2』は、元上司、政治家、ドバイの富豪、甦った死者らとパワーゲームを繰り広げ、果てには国家すらも敵に回した主人公ロッキーが「神」になるまでのプロセスを描いた作品だ。なんだけど、チンピラの成り上がり一代記としていびつながらもよくできていた前者と比べると、後者はどうにも散漫気味というか、金鉱の支配者となったロッキーがひたすら金のための金、権力のための権力を追い求めていくお話になってしまう。物語のベクトルを失ってしまうわけです。それに対して「いやさ、その無軌道さこそが『K.G.F』シリーズの、ひいてはロッキー兄貴の魅力なんじゃあないか」という意見があるかもしれないが、俺はまったくそうは感じなかった。次に何が起こるかまったく読めない奇想天外な脚本か、っていうと別にそんなこともなかったし、同じインド映画ならシャンカール監督の『ロボット』二部作の方がよっぽどぶっ飛んでたと思う。
しかもロッキーがなぜそうまでして金や権力を追い求めるのか、その行動原理がさっぱり理解できないので、いまいちお話に入り込めない。いちおう終盤に説明が入るし、前作からフラッシュバックでもってしつこく描写されているとはいえ、「だってお母さんがそうしろって言ったんだもん🥺」ではあまりにも弱すぎる。いま俺がやっていることは、岸田文雄に向かって「なんであなたは首相になったんですか?」と聞くようなもんで、権力を欲する人間やそれを取り巻くシステムに対して何らかのロジックを求めてもしゃーないとは思う。野暮天だと思う。がっ、それでも本作はれっきとした娯楽映画なので、劇中の主人公と観客である自分との間に何かしらの接点を共有したいし、それを見出すことができないというのはやっぱりつらい。極限すれば、ロッキーにとって亡き母の存在や彼女の遺言というのはもはや「呪い」ですらあるわけで、彼を「母の亡霊に縛られた哀しきモンスター」として描いてくれればもうちょっとノれたのかもしれない。あるいは、欲望に囚われて身動きが取れなくなったあげく破滅していく人間でもいい。なんだけど実際はその真逆、周囲に決して弱みを見せないカッコつけのヤンキーでしかなかったのが残念でならなかった。こんな人間的魅力に乏しい奴輩を兄貴だなんつって崇め奉るほど無邪気な人間ではないのだ、俺は。
前作の感想文の中で思いっきり苦言を呈した例のミュージックビデオ演出がかなりマシになっていたのにはびっくりした。登場人物の顔をじっくり映したり、アクションシーンをキメ絵で見せたり、といった演出が増えた。それでも普通の映画と比べると格段に目まぐるしいテンポの作品であるんだけど、前作比でいえばカットの数はおそらく2/3ぐらいにまで減ったんではないか。前作のあれはもはやノイズでしかなかったのでありがたい…と思いつつも、途中からあのワンアンドオンリーな語り口が恋しくなってしまう気持ちも若干あった。そしてびっくりといえば、エンドクレジット後に展開されるアレ。さして重大なネタバレでもないんで言っちゃうが、ようは最後の最後に続編『K.G.F: CHAPTER 3』の制作がデデーンと発表されるわけだ。しかし『K.G.F』シリーズにここまでまったくハマっておらない俺はあの書類の「K」の文字が見えた瞬間にブチ切れそうになってしまった(笑)。まだこの茶番を続けるつもりなのかよ、と(笑)。
この映画の敗因をなにかひとつ挙げるとしたら「『RRR』に勝ってしまったこと」これに尽きると思う。むろん、『K.G.F』の目指す方向はS.S.ラージャマウリの目指すそれとは明らかに違うんだけれども、なまじあんな煽り文を作っちゃったもんだから、こっちもどうしたって『RRR』に引きずられて見てしまうし、論じてしまう。その結果「あれ、意外と大したことなかったな…」となってしまう。たとえばこれが「『サーホー』を超えてインドNo.1ヒット!」みたいなキャッチコピーならそれほどハードルを上げることなく気楽に鑑賞できたかもしれない(笑)。いやさ、そもそもそんな映画、はなから見に行かないか…🤪
ambiorix

ambiorix