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あいつと私のakrutmのレビュー・感想・評価

あいつと私(1961年製作の映画)
4.8
石坂洋次郎の同名小説を、中平康監督が石原裕次郎、芦川いづみの主演で映画化した作品。石原裕次郎演じる裕福な家庭の大学生と、芦川いづみ演じる女子大生の恋愛を中心に描くコメディタッチの青春映画であるが、同時に、1960年当時の安保闘争の様子や、経済的に自立して夫以外に恋人もいる妻とそれを影で支える夫という進歩的な夫婦など、男女関係やセックスに対する新しい価値観を描いた前衛的な映画でもある。何でも自主規制して差し障りのない表現しか使わなくなってしまった現代において、本作での直接的な表現の数々は、今でもかなり刺激的である。

そのような内容でありながら、暗さや嫌悪感をまったく感じさせない青春映画に仕上がっているのは、石原裕次郎、芦川いづみをはじめとする出演俳優たちの演技のおかげである。何と言っても本作で一番輝いているのは、芦川いづみ。彼女の魅力が存分に発揮されている作品と言っても過言ではない。ストーリーは女子大生の視点で推移していくので、彼女を十分に堪能できるのも嬉しい。清純ではあるが、精神的に自立していて、一面では男性にも積極的であるという女子大生を見事に演じているし、彼女と石原裕次郎のテンポ良い会話がとても心地よい。何と言っても裕次郎演じる男子学生を好きになっていく様子が可愛らしいのである。ラストシーンで見せる、裕次郎に手で口を押さえられながらニヤつく表情など、もう最高!

相手役の石原裕次郎の爽やかな笑顔も本映画によく似合っている。その他にも、男子学生の母親を演じる轟夕起子の貫禄ある演技が印象的。芦川いづみの妹として吉永小百合が出演しているが、ちょっとしか出てこない端役であるので、その点はジャケ写に騙されてはいけない。当時はまだ新人であった吉行和子もなかなか良かった。
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