なべ

オキシジェンのなべのレビュー・感想・評価

オキシジェン(2021年製作の映画)
4.0
 最近、タイムラインに目玉が大写しになったSF調グリーンのタイトル画像を何度か見かけて気になってた作品。マークしてなかったのでタイトルが分からなくて、TLを遡ってみたがお目当ての画像に一向に辿りつかない。あ、いつのまにかビジュアルが悲痛な女性の顔に変わってる!
 なるほど、オキシジェンってタイトルだったのか。ふむ、酸素の話なんだなと視聴を開始。
 おお、これはっ!金はないけど知恵を絞った映画じゃないか。
 話はほぼワンシチュエーションの一人芝居。冬眠ポッドで突然目覚めた記憶が定かでない女性が混乱の中で真相に迫るというもの。ストーリーを支配するのはポッド内の“酸素”の残量だ。
 密閉空間とタイムリミットという過酷な環境設定が否応なく観る者を集中させ、洗練されたプロダクトデザインがリアリティを高める。何より耳慣れない緊迫したフランス語がやたら不安をかきたてる。
 生きたまま埋葬された棺桶から、生命を維持するためのゆりかごへと、ポッドのイメージがそのまま死から生へと変化していく見せ方が巧みだ。減っていく酸素と記憶の障害がその移行を簡単には許さないという演出もスリリング。
 少し前にCurveって短編映画があったけど、オープニングの理不尽さや絶望感はあれと似ている。もちろんCurveのようなやり逃げ感はなく、彼女が置かれている状況や理由は次第に明らかになっていくから安心して。真実がわかるにつれ広がるSF的状況がこれまたいいのだ。ああ、そういうことだったのか、だからなのかと、記憶の尊さについてSF的な感動が待っているから。
 いわゆる小品ってスケール感だけど、なかなか侮れない作品だから、SF映画好きなら一度観ても損はないかと。
なべ

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