友二朗

とんびの友二朗のレビュー・感想・評価

とんび(2022年製作の映画)
3.7
「お前は海になれ」

僕の父の物語。
人の背中の温め方。

何よりも身近で飾り気がなく、何よりも尊い繋がりを見た。懸命に育てる、懸命に生きる。人生において"懸命"は当然である時がある。

今一度周りを見渡してみると、こんなにも自分を思ってくれて、共に生きてくれる人々がいる。

父に、母に、育ててくれた全ての人に、
精一杯のありがとう。

美佐子の出産、廊下で震える安男。
喜びや怒りだけでなく、恐怖も曝け出せる人間性。だからこそ乱暴な性格でありながらも皆に好かれ、皆に助けられる。

ロケーションとセットがしっくり来る。
この寂れた感じと暖色の色彩に安心する。

「夕薙の料理は全部お袋の味じゃけえ」
「蛤はな、上と下の殻がぴったり合うんは
 この組み合わせしかないんよ。じゃけえ
 婚礼の祝いに使うんよ」
タエコと安子のシーンはただ泣いた。
遠回しの台詞がとにかく秀逸で涙腺死んだ。
会いたくても会えない母。
会えるのに会いたくない母。

「その寒さを背負うという事が
 お前にとっての生きるという事」
「旭、背中が寒くてならん時は
 こげえして皆でぬくめてやる。
 お前には背中をぬくめる者が
 ぎょうさんおる。それを忘れるな」
「ヤス、お前は海になれ。
 悲しみが道に降るとどんどん積もる。
 海は雪が降っても知らん顔じゃ。
 旭に悲しみを降らすな。お前は海になれ。
 海にならんといけん」
和尚がバチバチに良かった。
和尚が喋ってるシーンがこの映画の全てに思うくらい良かった。

巣立ちの手紙は素晴らしかった。
その後を案じる旭の優しさ。
ちゃんと別れに対して残ってる寂しさ。

東京の編集長めちゃいい人。
こうゆう人のもとで働きたい。

由美のキャラクターデザインはなんとも言えない。いまいち良さが分からなかった。

「由美さんの何処が気に食わんのじゃ。
 一生懸命、精一杯生きとるんじゃ!
 こげにめでたい事は他になかろうが!
 旭の女房はわしの娘じゃ!」
「備後の洗礼、しかと受け止めました」
照雲も素敵が過ぎる。

いい映画でした。
読んでくれてありがとう。

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「すみませんお義母さん。
 立ったまま失礼します」

「とんびが鷹を産んだ」

「高い高い、天まで昇れ。
 天まで昇っちゃれ!」

「東京の海はこまいでしょ」
「海は海じゃ」

「人間元気に生きとんのが1番よ。
 それにお前の子じゃったら
 優しい子になるわい」
このシーンめちゃ良かった。

「まいったのう、他所の子のために
 仕事して、自分の子にツリーも
 買っちゃれん。情けないもんじゃ」

「こんなにデカいトラックを
 腕っぷし1つで動かすんじゃ。
 男の中の男の仕事じゃろ」

「お父ちゃんは、ここにおるど」

「一銭二銭の手紙さえ
 千里万里の旅をする」

「お母さんはお父さんを助けて死んだんじゃ。お母さんはお父さんの身代わりになったんじゃ。すまんかったの。ほんま、すまんかった」

「明日が来るのを楽しみにできるよう
 生きてゆきます」
「世界一綺麗なお嫁さんじゃねえ」
泣泣

「わしを産ませてくれて
 ありがとうございました。
 おかげでわしの人生、
 幸せそのものじゃった。
 ありがとうお父ちゃん。
 ありがとうございました。
 ありがとう」

「そげなカッコいいこと言っとったら
 ケツ叩かれた分大損じゃが」

「ケーキを買えばお詫びになると考える
 その癖は変わらなかった」

「親父が死ねば良かったんじゃ。
 お母さんの代わりに」

「痛ぇのお。殴られるんは
 ほんまに痛ぇのお」

「田舎で皆に育てられたんです。
 どうか厳しく鍛えてやってつかぁさい」

「旭は皆の子じゃけえのお!
 お前1人やったらとんだ腐れ外道に
 育ったとこじゃ」

「本当に東京行きたいんやったら、
 縋り付く親蹴り倒しても行かんかい。
 それができんようやったらそこまでじゃ」

「巣立ちまで見届けてやらんかい!」

「お前はいつまでも若ぇのお。
 わしはもうおっさんじゃ。
 じゃけえ、旭の足手まといだけには
 ならんけえ」

「親父、行ってくるけ。
 元気で頑張ってくるけえ。
 親父も、お父さんもほんまに元気で」

「ええか、お前は好きで東京へ行くんじゃ。
 つまらん泣き言は言ってくるな。
 野垂れ死んでも良い。わしが東京
 行く時はお前の骨を拾いに行く時じゃ。
 わしから電話はせん。わしは東京に行かん。
 一人前になるまで備後に帰ってくんな」

「止めよか?」
「ううん、行ってください」

「山あり谷ありの方が
 人生の景色は綺麗なんよ」

「わしゃ100まで生きるけえ
 美佐子の分まで生きるけえのお!」

「阿呆、わしがここにおらんと
 お前らが逃げて帰る場所が
 失くなるじゃろ。最後の最後に
 帰れる場所があると思ったら
 ちいと踏ん張れるじゃろ」
友二朗

友二朗