kuu

とんびのkuuのレビュー・感想・評価

とんび(2022年製作の映画)
3.8
『とんび』
映倫区分 G.
製作年 2022年。上映時間 139分。
はぁ良くよんだなぁ重松清。
彼のベストセラー小説を、阿部寛と北村匠海の共演で実写映画化。
瀬々敬久監督がメガホンをとり、幾度途切れても必ずつながる親子の絆を描き出す。
小説にテレビドラマと観てきましたが、泪無しには観れませんでした。

昭和37年、瀬戸内海に面した備後市。
運送業者のヤスは愛妻の妊娠に嬉しさを隠しきれず、姉貴分のたえ子や幼なじみの照雲に茶化される日々を過ごしていた。
幼い頃に両親と離別したヤスにとって、自分の家庭を築くことはこの上ない幸せだった。やがて息子のアキラが誕生し、周囲は
『とんびが鷹を生んだ』
と騒ぎ立てる。
ところがそんな矢先、妻が事故で他界してしまい、父子2人の生活が始まる。親の愛を知らぬまま父になったヤスは仲間たちに支えられながら、不器用にも息子を愛し育て続ける。
そしてある日、誰も語ろうとしない母の死の真相を知りたがるアキラに、ヤスは大きな嘘をつく。

ダイナマイトが150トン
   小林 旭マイト・ガイ拝借いたします。
烏の野郎どいていな
とんびの間抜けめ気をつけろ
癪なこの世のカンシャク玉だ
ダイナマイトがヨホホ~ほ
ダイナマイトが150
畜生恋なんてぶっとばせっ
惚れても無駄さあきらめな
どっこい涙は禁物さ 胸につまったカンシャク玉だ
ダイナマイトがヨホホ~ほ
ダイナマイトが150屯
スカッと器用に抱えてみろ
命も賭けりゃ意地も張る
男と男の約束だ
いくぜ兄弟 カンシャク玉だ
ダイナマイトがヨホホダイナマイトが150
カックンショックだダムの月

阿部寛演じるヤスは将にダイナマイト、マイトガイ。
トンビどころか個人的には、ヤスは空を飛ぶことはできないまでも、地上に足を確りつけて、疾風怒濤のよう走る姿は、まるでダチョウを思う。
個人的には、こないなオッチャンは地上最強の鳥と思う。
しかし、悲しいかなもう、こないなオッチャンは少ない。
小生が兄と慕う方は、未だにこないな生き方をしてるし、容姿も阿部ちゃんに似てるし微笑ましかった。
故に、皆無とは云えぬかもしれへせんが、ほぼ見当たらない故に、邂逅とノスタルジック相まって嵌まりました。
小生は遊郭の町内で育ち、ヤクザモンやら、こないなカタギでも腰の入ったオッチャンが回りには沢山いて、叱咤激励の中、色んな感情を育んだ。
今作品の『とんび』は思えば2度かな?テレビドラマ化されている。
数ある小説群の中で、いや、重松節の作品は沢山ある中で、なに故に今作品をあえて映画化したんかと考える。
今作品を視聴して小生が感じたのは、消え行く人の『情』へと向かいつつある社会に、今作品は伝えるべき何かが沢山あるしやないかと思う。
今作品の舞台の瀬戸内だけではなく、日本中で暮らす昭和の人々はクソ真面目でいて鷹揚に生き、人と人と、せめて袖振り合う距離にいる相手を思いやれ、助け合う温かな絆ってのがあったなぁなんて『古き善き時代』のノスタルジックに浸るものではなく、先に生きる者、先輩が後に続く者、後輩たちへ未来のバトンを渡すべき大切なモンやと思う。
そんな作り手のあえて今作品を選んだ思いが伝わる。
ヤスは父無し子故に、親の愛やら、子への接し方を知らないまま父ちゃんになった。
しかも、支えとなるパートナーを失う。
しかし、難しい子育てを縁ある回りの者たち、仲間が支える社会。
こないな物語は負わされてる。
その難しい役を見事に阿部寛が背負って、映画を引っ張ってた。
その、ヤスを中心としたオッチャンが、『世の中変わった』って云いつつも普遍的な絆を深く感じて生きる息子アキラを北村匠海が良く演じきってた。
阿部寛と北村匠海の親子の絆見え善き化学反応が起こってました。
泥臭くぶきっちょなオッチャン、ヤスが宇宙のように広くて、無限な愛情を注ぎ、その重いくらいの思いを胸にアキラは大人へと向かう。
ヤスのキャラを瀬々監督は『無法松の一生』をイメージして描いたという。
大人になったアキラが父ちゃんや世話になった人たちの思いをどう受け止め、未来へバトンを受け継いでいくかは今作品の楽しみの一つとなってます。
コロナ禍で物理的かつ精神的な距離が生じがちな人間関係(小生はこのコロナ禍では人の情をコロナ禍以前より感じる)、こないな時代やからこそ、今作品は深く心に響いたんやとは思いますが、とても感動の人間ドラマでした。
kuu

kuu