Melko

夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版のMelkoのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

「山澤、俺は、次の鐘を、つくまいと思う」
「ああ、つくな。百合さんのために、つくな」

真に恐ろしいのは人間。
悲しく美しい物語。

泉鏡花が原作。
夜叉ヶ池は福井と岐阜の境の山間に実在する池。

ある方の、全然違う作品のレビューブログを見ていて、参考になるなぁと思った直後、たまたまこの作品のレビューを見た。存在を知らなかった私は、表紙の坂東玉三郎演じる白雪姫の美しさにヤラレた。
調べれば、ちょうど2ヶ月ほど前に渋谷で限定劇場公開されていて、劇場公開以来42年を経て、初のソフト化なのだそうで。(その間、地上波放送はたったの一度)しかも4Kリマスター。劇場で見れなかったのがなんとも惜しい思いだが、ええい!と円盤購入。

妖艶な人妻 百合と、勝ち気で可憐な白雪姫の二役を演じる坂東玉三郎の、まさに独壇場。所作がもう女以上に女らしい。とゆうか、女にこの所作はできない。体つき、肩の下がり具合、声、物憂げな顔。
百合さんの時は化粧が薄いので若干オネエに見えなくもないが、こんな女性、いる。
白塗りの白雪姫になってからは魅力が全開。このシーンはとっても舞台ぽくて、雰囲気もガラッと変わる。脇を固める妖怪大戦争チーム。懐かしい、常田富士男…まさかのカニ役!笑
歳を重ねるごとに、白塗りの美しさに魅了されている私…子どもの頃苦手だった歌舞伎や能も、今なら見れたりするのかな…?

狂言回し山澤役の山崎努、若い!エキセントリックなお顔。
若く静観な雰囲気なのに老け顔の加藤剛。

序盤、加藤演じる萩原をめぐり、目線で火花を散らす山澤と百合の、物言わぬ一触即発の空気が独特。怪談のような雰囲気も漂う。

人間はどうしてかくも愚かなのか。
同じ過ちを繰り返す。
その昔、雨乞いの生贄に捧げられた白雪姫(ひーさま)。彼女は怒りと悔しさで炎を放ち、村を焼いた。夜叉ヶ池に囚われるひーさまは、剣ヶ峰の王子に恋をしているが、彼女が動くと大洪水になり、村が滅びてしまう。知ったことか!あたしゃ行くよ!と息巻くが、お互いを純粋に愛し合い、鐘を守り続ける百合と萩原のことを思い、踏みとどまるひーさま。

日照り続きで頭おかしくなって、生贄が必要だ!と叫ぶ村人たち。自分が生贄になるのは嫌だ。百合は白蛇に取り憑かれてる!あいつは人間じゃないから生贄にしてしまえ!笑い歓声を上げながら百合を牛に括り付ける村人たち。百合を助け、庇い守る萩原と山澤に詰め寄り、日本男児がどうのこうの意味不明な理屈でまくしたてる村人たちの気持ち悪さ。込み上げる怒り。
このシーンがすごく長くて、辛かった。
大勢の村人たちが、百合1人の家に押し入り泣き叫ぶ百合の懇願を無視して彼女を連れ去るシーンも、とても胸糞悪し。

そしてそして、追い詰められた百合は自害
怒りに震える萩原と山澤は、遂に、鐘をつかないことに…
轟音と共に、水に飲み込まれる村。逃げ惑う人々。屋根に登り、人を蹴落とす人。
「山澤、さよなら」の言葉を残して百合と濁流へ消えた萩原。
鐘楼の柱に身をくくりつけ生き残った山澤は、天に登る白雪姫と侍女たちの姿を見る。呪いから解放され晴々した姿。
水に飲まれた親友とその妻を思い、肩を落とし泣き崩れる山澤。

ラストカットのロケ地は恐らくイグアスの滝?
洪水の場面も相当なスケール。

おどろおどろしくも荘厳、かつ不思議な作品でした。
惜しむらくは、戯曲独特の台詞回しな白雪姫始め何人かの人のセリフが聞き取れなかったこと、字幕が付いてないが故に今のところ理解する術がないこと…
活字が苦手なので、原作を読むことはないかもしれないが、せっかく買った円盤、これから何度も見て、少しずつ味わいたいと思う。

参考レビュー▼
https://www.pintscope.com/serial-story/yashagaike/

https://gamp.ameblo.jp/tron-12/entry-12661768484.html
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