HicK

ピノキオのHicKのレビュー・感想・評価

ピノキオ(2022年製作の映画)
3.8
《絶妙な脚色が好き。愛に溢れた作品》

【はじめに】
世界的な大不評 笑。
言ってる事も結構分かる。でも、自分は好きだった。「完コピリメイクの必要性」って言う問題は前から自分も感じてるところだけど、少なくとも実写リメイク版「ライオン・キング」よりは物語のアップデートはあった。

【個人的な思い入れ】
監督ロバート・ゼメキス、主演トム・ハンクス、音楽アラン・シルヴェストリ、なんて鉄板で最高のチームすぎやしませんか?大好きな面々。個人的に「となりのトトロ」「トイストーリ」と並び、自分を育ててくれた人生の3大アニメのひとつなので、思い入れがありまくり。

【リアルなオリジナル版】
オリジナル版のピノキオは「なかなか学んでくれない子」「ホイホイついて来るチョロい子」な印象が強くて、何を判断するにも誘惑する相手の口車次第。楽しい事が好きで、それをチラつかせると簡単に落とせる。だから同じような失敗の連続にイライラさせられるが、結構リアルな"無知な子供"だった。

【情の深いリメイク版】
対して、今回のピノキオの判断基準は"ゼペットへの愛"が大きく影響しているように思えた。彼に言われた事、彼がどう思うか、を基準にしてちゃんと自分で考えている事がセリフから何度も伝わってきた。誘惑にも簡単にはのらず、流れに抗えないような展開にマイナーチェンジされていて、プレジャーアイランドでも終始葛藤している。とても健気。(聞き分けも頭も良くなっているが)。

【より強くなった2人の絆】
今回の健気なピノキオと序盤でのゼペットの悲しい背景、そしてトム・ハンクスの演技が素敵すぎて、切なく哀愁漂うゼペットと期待に応えようとするピノキオの絆がより尊く感じた。ラストの2人はもちろん、序盤でピノキオを見送るシーンですらグッときた。

【その他、大きな変更】
*少しだけネタバレ

新たに追加された足の不自由な女の子も良かった。演技も歌も好き。彼女はピノキオがもう一度自身の目標を確認するきっかけであり、「体は関係ない、大事なのは心」「そのままで素晴らしい」という、のちの展開に繋がる大きな伏線にもなっていた。

で、ラストの変更。でもけっこう好き。今回、中盤でブルーフェアリーが助けに来なかったり、"チートを許さない"展開で統一。それによって変更された描写は現実的にも背中を推してくれるようなメッセージにも感じたり、女の子やピノキオの存在を肯定してくれるような演出にも感じた。素敵なラスト。

【ただ、】
木製の子供は珍しいのに、キツネが街を普通に歩き回る世界観は、実写にしてみるとかなりシュール。

全体的にCGが安っぽい。クレオの水とか海岸の波とか、ゼリーみたい 笑。絶対にこぼれないクレオの水 笑。

コメディがムダに現代寄りなのも気になる。"クリス・パイン"の名を出したり、オリジナルとは少し違う第四の壁の破り方、そして、う○こ….。あれは何故?

【総括】
個人的にリメイク作としての肉付けや変更は好みだった。全体的な世界観はオリジナルの方が優秀だと思うが、リアルな危なっかしさを感じるオリジナル版ピノキオよりも、情が溢れるこのリメイク版の方が好きかも。とにかく温かく可愛らしい作品に進化していた。

【ちょっとツボ】
ゼペットの時計の一つにお母さんが子供のお尻叩くやつ。オリジナル版の再現だけど、今回は叩こうとする母親が警官に止められてた 笑。今っぽくてウケる。
HicK

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