囚人13号

ギデオンの囚人13号のレビュー・感想・評価

ギデオン(1959年製作の映画)
3.8
とりあえず話題の「フォード論」の目次に目を通してみると、本作に触れているのはフィルモグラフィーと鳥籠についてのみ。これら作品が冒頭に記されている"批評の実践"をする価値がないと判断されたのかは憶測の域を出ず、ただ俺に言わせれば本作は蓮實氏の掌中から逃れた数少ないフォード作品なのである。

5秒の証言のために焦り、咎められるという誇張されたユーモアや冒頭とラストが共鳴するスマートな天丼、職場での厳格なイメージとは裏腹に妻子に弱いという父親像は紛れもなくフォード。
残酷にも「フォード論」の例外は簡単に見つかる。彼の女性像は簡単に性別の垣根を超え、時に男勝りで逆に男が女々しい場合すら見受けられる…とのことだが、本作において妻であり母であるアンナ・リーはどうだろう。最初から派手な柄のエプロンを纏い、理解あるしたたかな女性ではあるがそれも総合的には良妻賢母に収まっているように感じる。何事にも例外はつきものだが、蓮實重彦が本作についての言及を意図的に避けていたのであれば「フォード論」には議論の余地があるということだ。
囚人13号

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