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パーフェクト・ケアの010101010101010のレビュー・感想・評価

パーフェクト・ケア(2020年製作の映画)
4.0
何の前情報もなく、現代の介護ビジネス〜後見人ビジネスの真相を描く社会派映画かと思いながら観ていたら、気づけばマフィア映画にまで展開。
ジャンルすら逸脱するようにして思いもよらぬ遠いところまで観客を連れて行ってしまう、引き込んでしまう手腕は見事。
しかしそれだけでなく、「社会派」作品とは異なる「エンタメ」の形式を借りながら、観客にある種のモヤモヤを与えることできちんと問題を投げかけることに成功している点が素晴らしい。

「業界」のみならずビジネス界全般に見られるであろう「成功者」たちの、倫理観の欠如。
やっていることは詐欺師なのに、彼女彼らは法に守られているのである。(「富豪になるには、いかに法を犯すことなく犯罪できるかだ」と言っていたのは、アメリカのどの富豪だったか…)。クソみたいな話だ。
しかしまた、その倫理観の欠如自体が、そこから始まったものではなく、その親や育った環境からくる反動だったりする点もさりげなく描かれており、脚本家の潜在的(?)左翼性も感じさせて、鋭い。

しかしマフィアのやることがことごとくツメが甘いのって、どうなの?そういうもん?

それにしても、最後に出てきた男に、思わず大拍手してしまった。こいつこそヒーローだろう。
2022.7.8以降のこの国(日本)では、この男をどう評価するかは、難しくなっているのだろうか?
いや、こういった形に訴えることしかできないところまで来てしまったのは、結局あんた方がやってきたことのせいでしょ、としか言えない。
それでもなお、大切な人に看取られて死ぬ設定は甘すぎるんじゃねぇの?とすら思ってしまうのだが、そこもまた、施設内で管理され孤独に死んでゆく高齢者たちとの対比かな、と思う。


ちなみに、オープニングからエンディングまで、音楽のセレクトが懐かしすぎる。