てながあしなが

14歳の栞のてながあしながのネタバレレビュー・内容・結末

14歳の栞(2021年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

今年見た映画の中でダントツで一番良かった。ひたすらに美しい映像を見せてもらった。

舞台は埼玉県のとある中学校の2年6組。クラスの35人にカメラを当て、修了式までの約50日を描く。

登場人物のみながほとんどカメラを意識していなくて、「どうやって撮ったのこれ?」と思うことしきり。というか、こんな企画を考え、そして結実させた製作陣もヤバい。

強豪校の全国大会までの軌跡、みたいなものは見たことあるけど、どこまでも普通な中学生の普通な日常は見ようと思って見れない。それだけでドキュメンタリーとして十分な価値があると思う。


ムードメイカーもいれば、スポーツが上手なやつもいれば、彼女がいる男の子もいれば、体育会系の男子を憎みながらコンピュータいじりに精を出す子もいれば、障害を持った子もいれば、「自分のことが嫌いです」と吐く女の子もいれば、不登校になってしまった子もいれば、その子に申し訳なさをずっと感じる子もいる。

特に自分が気になったのは、小学4-6年生の頃、友達だと思ってた子に裏切られた経験から、「中学校のたった3年間で信頼なんて築けるわけがない」と語り、友達を作ろうともしない女の子。それでも、インタビュアーの問いに「(作れるものなら)友達を作りたい」と答える。今後の人生で、彼女の心を再び開く人が現れるのを切に願う。

後半で、不登校の子は、上級学校見学の際に高校の先生に挨拶をしなかったり、提出物を出さなかったために同じ班の子に責められ、それ以降学校に来なくなったことが明かされる。責めてしまった側の少年はそれをずっと悔いており、最後の最後に「クラス全員の記念撮影には来て欲しい」という手紙を贈る。そして、ラストーー。ドキュメンタリーはフィクションと違って、うまくいかないよなぁ。

バレンタインのシーンとかヤバすぎる。友達に押されてバスケ部の彼にチョコを渡しに行く女の子。そして、ホワイトデーにお礼を渡しに行く男子。家をピンポンして、「俺さ、部活今チャンスなんだ。部活が終わるまで付き合えないけど、俺の気持ちは変わらないから」。そして帰り道、「人生イチ緊張したわ〜」。青春の粋が詰め込まれとる。


自分は中学生の頃、特に何も悩みもなかったし、自分のことを嫌いになったこともなかったけど、もしカメラが向けられていたら、どう振る舞い、何を語ったんだろうか。無意味な空想だけれども、この映画を観てからそんなことを考えてしまう。

色々なことが語りたくなる。上映館が増えて、色んな人と感想を語れるようになる日が来るのを望む。