れんれん

14歳の栞のれんれんのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
4.0
上映している館や機会が少なく、おそらくプライバシー保護の問題があってディスクなどで販売したり配信したりしないかと思います。なかなか観られないかとは思いますが、チャンスがあったら、ぜひ! この作品は、おすすめします。

ある中学校の3学期、2年6組に在籍する生徒35人全員に密着した青春リアリティ。

上記の映画宣伝の文章通り、そういうドキュメンタリーです。
まず、実在する、とある中学校の2年6組の生徒全員、不登校の生徒にまでカメラを向けていること自体に、学校や保護者がそれを許すものだろうか? という疑問が湧くことでしょう。
製作スタッフは、この企画実現のため、まず、生徒一人ひとりの短編映画をつくり、関係者を説得したそうです。映像におけるドキュメンタリー、文筆におけるノンフィクションは、作り手と取材対象の距離が如実に出ると考えております。別に近ければよいというものでもありません。
その説得力も素晴らしいですが、恐るべき子どもたちを相手に、カメラを向け続けられたこと自体、すごい作業です。一定の信頼がない限りできないことです。だいたい、それが許されたとしても、心のどこかで、「本当に撮ろうとしているものが撮れているのか」とカメラを向けている方が挫けてしまいそう。

彼ら1クラスの日常、3年生になる前の50日あまりに密着するわけですが、もちろん、華々しくドラマが展開されるわけではありません。クラスにおける人間関係や、彼らが抱える悩みや諦めや怒りが、インタビュー、対話によって綴られていく形式です。
しかし、「早く大人になりたい」「人間関係をリセットしたい」「赤ちゃんに戻りたい」などなど、彼らがぶつけてくる「いま、ここではない感」は、スルリと私のなかに入り、それを一心に浴びた私は、己の中学時代を振り返り、やはり「一刻も早く大人になって家を出たかった」という当時の思いがフラッシュバックしました。もしかすると、本音とも虚勢とも見える彼らの姿に、観客である私が甘えて、「そうだったはずの過去」を重ね合わせたのかもしれません。大人になってしまったことを、痛感させられました。
モキュメンタリーでも、メタ・ノンフィクションでもなく、ドキュメンタリー作品の(はずの)本作ですが、中学2年生という被写体が虚実をない交ぜにしてくれる効果があって、どこまでも「不安定なノンフィクション」に仕上がっているという点でもリアリティがあります。
しかし、「中学2年生、14歳」とは何なのでしょうか? エヴァにも乗れるし、「中二病」という代名詞にもなり、楳図先生は大作のタイトルにまでしてしまった。この映画は公開が2021年ですが、撮影はその前年なのか前前年なのかもっと前なのか、それはわかりません。彼らが中学を卒業してから公開したのかなと勝手に想像はします。これが15歳だと成立しないと思います。受験とか進路とか、目的が一方向に向きすぎていて。
きっと、14歳の私が本作を観たら、けっと言って、「大人がわかったような気になるな」と怒りの言葉を吐くのでしょうね。

追記 そういえば中学生たちはマスクをしていました。コロナ禍ということが考えられるので、撮影は2020年かもしれませんね。
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