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Arc アークのndntmtkのレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
4.5
Filmarks試写会にて鑑賞させていただきました。SF映画と認識して観に行ったらとんでもなく泣いた。

・リナ
TVでしか観たことのなかった芳根さんの演技力に驚き!
見た目はアーティスティックな美しさに反した中身の脆さ、10代の奔放さ~若さを保ちながらも年齢を重ねたからこその落ち着きに至るまで自然体な表現が素晴らしかった!
コンテンポラリーなダンスは菅原小春さんを彷彿とさせ
30代のドレスやコート素敵だった

・前提として不老不死はヒトとして進化なのか退化なのかを主張する、押し付ける映画ではない(監督トークでも仰っていた)
・自分の子供より長く生きる未来があるかもしれないということ
・術後の遺伝子異常の発生リスク、望んでも経済的に手術を受けられない者、あるいは勿論自らの意思で老いて死ぬことを選択する者もおり、おそらく現代以上に新世代では格差・生きづらさが発展、出生率の大幅低下に自殺率が高まる社会。しかし裏を返せば生き方の選択肢が増えた、という希望的側面

・エマ
『生の対極に死があるんじゃない、生の中に死がある』映画全体のテーマ的この台詞から、タイトルのArcの意がリンクする。当初は完璧主義なボスに見えたが、どん底のリナを助けたのは、先見の明と共に、自分の弱さを重ねたところがあったのか。
彼女の死生観に大きな影響を与えたであろう、自らプラスティネーションした同性パートナーとの関係性を掘り下げた描写がもっと観たいと気になった。選んだ最期までデザイナーらしく美しかった

・よき相棒だったカナコ
ナナを産んで会社をやめたということは、不老不死を選ばなかったのだろうか…ナナはあの島で、母を看取ったときどんな気持ちだったんだろう。

・モノクロでも美しい、天音の庭
ロケ地巡りしたい。
小豆島前から行ってみたかったけど、ますます行ってみたい。

・リヒト
個人的に小林薫さんがいなくては映画の後半は成立しないと感じた
おもむろに懐かしいカメラのシャッターを取る仕草、ハルや亀に目をかけて遊んでやるシーン、船での告白(目もとしか見えないアングル)目線の一挙一動、とにかくなにもかも感動させられる演技だった。

・フミさん
リヒトと車イスでぐるぐる無邪気に遊ぶシーンがピークだった。風吹さん出演のドラマとかみたらいつも泣く
『生まれ変わっても、あたしを、見つけてね…』思い出して何回も泣ける
ありのまま生を全うした登場人物であり、そんな最愛の人にリヒトが出逢い本物の人生をはじめられたこと、不老不死関係なくこの映画の最大の救い。

・135歳のリナ
快晴の青空に向かって、17歳の頃の様にまっすぐ手を伸ばした135歳のリナにいちばんの『生』を感じた
倍賞さんの存在感だけでも価値がある

わたしの生も死からはじまってるのかもしれない。自分らしい生き方、選択する自由とはなにか考えさせられました。
コロナのなかで素晴らしい作品を提供してくださりありがとうございました。
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