映画好きの柴犬

Arc アークの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
3.7
リナは罠にハマったのか?

 死体を生前の状態に保つプラスティネーションのアーティストであり、人類で初めて不老化処置を受けた女性であるリナ(芳根京子)の一生を描く。

 「愚行録」「蜜蜂と遠雷」の石川慶監督による、ケン・リュウの短編小説の映画化は、不老不死をテーマとしたある意味世界系の作品。好きか嫌いかでいえば好きだけど、作品としてはかなり歪というか、引っ掛かりを感じた。

 石川慶監督は、ストーリーよりもシーンで語る作家という印象がある。本作も印象的なシーンやセリフが多数あるが、それらが記号的・断片的すぎてうまく繋がってこなかった。というか、繋げるための情報が少なすぎるという感じか。リナが、見学に来た子供の質問に「(不老化は)あなた自身の選択」と答えるシーンがあるが、リナ自身は周りに流されているだけで、自分で選択しているようには思えなかった。

 不老化処置をした以降のシーンをモノクロで見せているが、これがどうしても死後の世界というように見えてしまう。「死者を生きているように見せる」プラスティネーションと、「(死んだように)生き続ける」不老化処置。対比しているようで、どちらも死んでいることに変わりはない。