来夢

Arc アークの来夢のレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
4.1
生死感の話のように見えて、実は現実(視聴者)には必ず訪れる死との向き合い方の話だと思うんだ。
正直、前半30分は失敗したかなと思ったけれど。なんか嘘くさいし、こんなんあるわけ無いじゃん。倫理的な問題も法的な問題もこんなに簡単に解決するわけないじゃん。こんな人類史が転換する記者会見の記者席に日本人しかいないわけないじゃん。とか、色々な部分でものすごいリアリティの欠如を感じたんだけれど、すぐにリアリティの欠如にこそ意味があるってことに気づいた。不老不死に是非を問う映画であれば、SFとはいえやはりリアリティは必要。だけれど、現実にリアルであるはずがない不老不死。それをリアリズムを持って美しく描いてしまったら、人は不死の魅力に勝てなくてメッセージ性は損なわれてしまう。なにかしらの嘘臭さを感じていた方がいいんだ。少なくとも、死か不死か選べと言われて不死を選ぶような人がこの映画のターゲットだろうからね。なので、迷わず死を選ぶような人は回れ右していいと思う。たぶんただの嘘くさい映画に見えると思うので。俺は超死にたくないです。ください不老不死。なったらなったでね、って頭ではわかるんだけれども。
でも不老不死がいいって言い切れるのも、どうせ叶わない妄想だって分かっているからかも知れないね。実際その時がきたら簡単には選べない。死がどんなに怖くても自分より先に自分の子が死ぬってのは想像もしたくないくらいに嫌だしね。
まぁ、例え技術的に不老不死が可能になったとしても、少なくとも俺らが生きている時代にそれを人間が使う時なんて来やしないんだから、どこかで妄想ごっこはやめて、リアルである死と向き合わなきゃいかんよね。

ちなみに、プラスティネーション自体はもう数十年前に生まれた技術で、「人体の不思議展 中国」とかで検索すると恐ろしい話が見られますよ。
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