にょいりん

Arc アークのにょいりんのレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
2.0
「愚行録」、「蜜蜂と遠雷」とハードルの高い原作を高レベルに映像化してきた石川慶監督が作ったケン・リュウ原作のSF映画なので、とても期待していました。 できればドゥニ・ビルヌーブの「メッセージ」みたいな映画が日本でも制作されたらいいな、とも思っていました。
でも、やっぱり無理なんですね。。

冒頭の近未来っぽい雰囲気のアンダーグランドクラブのシーンを観て、これはダメかもと、すでに感じました。ハリウッドとの予算規模が当然違うのはしょうがないのですが、とてもとても安っぽいし、ダサかったです。
全体的に時代設定が不明なのですが、死体を生きていた姿のまま保存する「ボディワークス」という技術と不老不死になる技術以外は近未来感がまったくなく、とても違和感がありました。街並みも服装も現代のままで、しかもモバイル機器が一切出てこない。電子機器がなくなった近未来の設定なのでしょうか。それなら少しは説明が欲しい。
それでも、主人公が不老不死の処置を受けるまでの前半はまだガマンできますが、後半の「やすらぎの郷」のような展開になってからはもう違和感しかなくて辛かったです。前半部分から60年近く経っているはずなのに、不老不死に関する事以外は日常的にまったく進歩していないように見えるのですから。

ただ、近未来感の不足はこの映画の本題ではないので目をつぶったとして、テーマである不老不死となった人の人生とは?という部分はというと、それも表現が薄っぺらかったという他ありません。主人公の芳根京子さんは幅広い年齢に佇まいを合わせて美しく演じていますが、姿は30代のまま中身は90代という前代未聞の役を演じる事には成功していないように感じます。70代を演じる風吹ジュンと中身が90代の芳根京子が話していて、言葉の端々で芳根京子が年上に見える、という新鮮な感覚がこの映画には必要だった気がします。それはとてもハードルの高いチャレンジなのでしょうが。なんだか、とても残念な映画でした。