たむ

デカローグ デジタル・リマスター版のたむのレビュー・感想・評価

4.9
ポーランドの巨匠クシシュトフ・キェシロフスキ監督最大の大作で、全10話の約10時間、十戒をテーマにした作品です。

もともとはポーランドのテレビシリーズで製作されて、これは映画版です。
そのうちの2話は『殺人に関する短いフィルム』と『愛に関する短いフィルム』として独立した作品に再編集されています。
現代のポーランドを舞台に十戒を描くので、全てのエピソードが尋常ではない重厚なドラマが展開します。
どこから観ても、どう観ても良いとの事ですが、今回は番号順に鑑賞しました。
1話観るたびに感情的に疲弊するほどの重さ、悲劇のカタルシスがありこれが10話となるとさすがに映画史上の大長編、他の作品では味わえない映画世界を体感出来ます。

しかもキェシロフスキ監督らしく、全てを説明するわけではなく、現実と幻想、視点を操作する事でサスペンスを作り出します。
つまり能動的に鑑賞する事が必要となる。
さらにサブストーリーで『ふたりのベロニカ』『トリコロール』の原型となる物語も展開します。
ユニークなのは、メインではない事で、メインストーリーは、長編映画になっている事です。
視点が変われば、誰でも主人公になるという事だと思います。

キェシロフスキ監督作品は全てつながっており、キェシロフスキ・シネマティック・ユニバースが拡張します。
世界は、人々はどこかでつながり、影響を与えていく。
確かに10時間を費やすのはなかなかですが、1話のオープニングから10話のエンディングまで通してみると、他の映画にはないスケールを感じさせる作品ですね。
たむ

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