冷蔵庫とプリンター

獅子座の冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

獅子座(1959年製作の映画)
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 ロメールの長編処女作。制作から公開までがかなり難航したらしいが、40間近の男が街をフラフラ彷徨い歩く平坦なストーリー構成を鑑みると、無理もないように思う。しかし、遺産相続に失敗したこの男、頼れる友人が皆バカンスで街から姿を消し、たったひとりで人生初の苦境に立たされたこの男が見るパリの景色の豊かな表情は非常に見応えがある。街が主役と言っても過言ではない。それにしても(おそらく照明の関係で)日陰に入ることすら許されないこの獅子座の男の絶望感たるや。ジャンルノワールならば、浮浪者に堕したこの男の悲哀を高らかに謳い上げて幕を下ろすだろうが、ロメールはそこにもう一捻り加えていてこれもまた一興。悪くない。