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獅子座のさんのレビュー・感想・評価

獅子座(1959年製作の映画)
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中盤からラストにかけてものすごく深刻な状況が続くけれど、それを最初と最後の軽薄で小気味のいい調子ではさんでいて、なんだかロメールな感じがした。
こんな深刻さの描き方は、今までみたロメール作品ではみたことがあっただろうかと思うほど、仰々しかったような気がする。

食べ物を掠めようとして犬に吠えられる。
川に落とされた菓子の袋をなんとかして拾うが、びしょ濡れのクズになってしまっている。
目の前で軽食をとる女の子たちを凝視するが、うたた寝をしているうちに、周りには誰もいなくなっている。
市場で万引きをするが、捕まる上に殴られて、からがら逃げ切るも、結局食べ物は手に入らない。
ついには、歩きすぎて靴の底が剥がれる。
ポンヌフのあの場所で一夜を過ごす。
状況が状況なら、音楽も大げさ。でもこの落ちていく様は、みていられる。ひとつひとつのエピソードがリアリティとユーモアを孕んでいて良い。そしてやはり、地面を這いつくばっても、街を歩くことをやめないピエールのことを嫌いになれない。

ホン・サンスも、初期の作品では深刻さを深刻なものとしてしっかりと描いていたけれど、時代が下ると、より軽快になっていく。そういう意味でも、二人のフィルモグラフィーが重なって見えてくる。
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