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PASSING -白い黒人-の一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

PASSING -白い黒人-(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

レベッカ・ホール監督作。

黒人の女性作家:ネラ・ラーセンによる1929年発表の小説「Passing」を、本作が初監督(兼脚本)となる女優:レベッカ・ホールが映画化した社会派ヒューマンドラマの傑作で、境遇の異なる二人の黒人女性の生き様を通じて人種差別の実情を赤裸々に浮かび上がらせています。

1920年代のNYを舞台に、黒人男性と結婚しハーレムで暮らしている肌の白い黒人女性:アイリーン(テッサ・トンプソン)と、同じく肌が白いことを利用して白人のふりをし白人男性と結婚し子どもをもうけた黒人女性:クレア(ルース・ネッガ)の久方ぶりの再会と人生の交錯を描いた人間ドラマで、一般的な黒人と比べてお互いに“肌が白い”ものの、一方は“黒人”として生きることを選び、もう一方は“白人”として生きることを選んだ二人の黒人女性の対照的な生き様がある日を境に交錯していきます。

ジョン・カサヴェテスの名作『アメリカの影』(59)のように、見た目は白人に近い黒人女性の苦悩と葛藤に焦点を当てて、人種差別が至極当然だった時代のアメリカにおける不条理な差別の本質を鋭く浮き彫りにした作品で、肌の白い妻を白人であると疑わない差別主義者の夫が彼女に言い放つ「君の肌がどんなに黒くなっても君は白人さ」の言葉が、“肌の色素の濃淡”に関わらず、“黒人の血(遺伝子)”が入り込んでいること自体が白人にとっての黒人の定義であり差別意識の根拠となっていた事実が分かります。

人種差別が現在より遥かに横行していた理不尽な時代ゆえに、同じ黒人であっても“黒人社会で素直に生きる”または“白人社会に無理に溶け込む”という対照的な人生を歩まざるを得なかった二人の黒人女性の数奇な生き様を、シャープなモノクロの映像美&スタンダードサイズの画面というクラシカルな画作りの中に鮮烈に描き出した社会派ヒューマンドラマの傑作で、本作のような良質なNetflixオリジナル映画は劇場でも公開すべきだと改めて思いました。
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