ShoIkoma

タイガーズ サンシーロの陰でのShoIkomaのレビュー・感想・評価

3.6


『ヨコハマ・フットボール映画祭2022』にかかる映画。試写で観させていただいた。

サッカーシーン、とくにヨーロッパの主要リーグを追っている人ならば「あるある」となる内容だが、まずそういうストーリーを違和感なく観させてくれるという意味で希少な作品だ。選手たちの様子、着用しているユニフォームやシューズ、プレーシーン、メディアやファンの描かれ方。どれもフットボール界のリアルに準じているから、ストーリーに没頭できる。

「たくさんのタレントが、負け犬としてここを去る。故郷に帰って家族や友人に、人生で最大のチャンスを無駄にしたことを説明する」。多くの日本人選手にあてはまることであり、改めて彼らが“負け犬”と断言されていることに胸が締め付けられた。Jリーグに帰ってきた選手たちの人生はつづき、それぞれ固有の価値を持つ。それでもやはり、フットボールのメインストリームで彼らは“負けた”。

アスリートの強さ、不屈さに僕たちはストーリーを見出す。事実、「なぜここまで強靭なメンタルを持つことができるのか」と思える選手たちをたくさん見てきた。しかし実際には、そうした一握りの選手たちがもつストーリーは、綺麗事だけではないのだと思い知らされた。

リアルだからこそ、サッカーを知らない人が観ればインスパイアな体験にはなるはずだ。しかし娯楽作品のように主人公の変化のきっかけがわかりやすく描かれることはない。この作品をいかにフットボールファン以外に観てもらうかが重要だ。
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