ryosuke

邪魔者は殺せのryosukeのレビュー・感想・評価

邪魔者は殺せ(1947年製作の映画)
3.6
ボールがバウンドを繰り返して防空壕に辿り着き、防空壕が幻想の監獄に変わるシーンが良い。
「第三の男」の二年前の作品だが、キャロル・リードはこの時からダッチアングルをちょこちょこ使ってたんだな。
夜の街での細い路地を活かした逃走劇は「第三の男」の監督だけあって流石に魅力的。光と闇が戯れる画も良いし、バスのつり革を使って窓からジャンプなんて楽しい。
群像劇の登場人物が次から次へと入れ替わるので一貫した物語という感じはあまりしない。テンポも緩いので結構長く感じるのは否めない。
神父の家で愛だの信仰だのについての説教が始まるあたりから正直つまらなくなってくる。
鳥を飼っているシェルの登場後は歪にコメディが侵入し軸がブレる。中盤までは結構良かったのだが。
主人公は中盤以降は禄に喋れなくなり、小道具のようになって転々とパスされる感じになってしまう。
ビールの泡に群像劇の登場人物たちが映り、動き出す絵に囲まれながら神父の演説を思い出し、と正気を失っていく主人公。彼の心境変化の理由は単に死ぬ前の錯乱で、それによってコリント人への手紙の「愛がなければ無に等しい」なんて唐突に悟られてもな。これで感動しろってのはちょっと無理がある。
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