久遠

ひらいての久遠のレビュー・感想・評価

ひらいて(2021年製作の映画)
5.0
常に相手軸で物事を考える美雪と、自分のことしか考えられないように映る愛の対比。愛による美雪、たとえへの情念のぶつけ方が常軌を逸してるように見えなくもないが、ディスコミュニケーションな訳ではないと思う。愛は文字通り「愛の奴隷」であり、自分を敢えて傷つける行動ばかり繰り返す。全く相手にされないたとえに執着するのも彼女の独占欲によるものだけではなく、自傷行為そのものとも言える。そして、彼女にとって自傷と言えなくもない美雪とのコミュニケーションが、最終的に「愛」へ転化する展開はタイトルの『ひらいて』をきっちりと示しており、凄く感動した。
特筆すべきは、エモーションを炸裂させる場面で叫ばせたり大泣きさせたりしない監督の演出。役者をちゃんと信用してるし、杏奈ちゃんが作る表情の機微を上手く引き出せていて、本当に素晴らしい。
尺の割に展開がやや鈍重なのが気になった。ただ、それすらも愛らしく感じるほど今作は好きです。首藤監督と杏奈ちゃんのタッグ作品をもっと観たい。
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