湯っ子

ひらいての湯っ子のレビュー・感想・評価

ひらいて(2021年製作の映画)
4.1
原作未読。
愛ちゃんは可愛くて頭が良くて要領が良くて、たぶん中学校までは何の葛藤もなく生きてきたんじゃないだろうか。誰よりも秀でていたはずの愛ちゃんは、高校3年生になってやっと、誰よりも遅れて思春期を迎えたように思う。
愛ちゃんの中にある正体不明のカオスなエネルギーは、愛ちゃんの自覚的には「たとえが好き」に集約されているけれども、実は違う。たとえにもそれは見抜かれてる。たとえの恋人美雪に近づくことも、「たとえが好きだから」って自分に理由づけしてるけど、これもたぶん違う。
愛ちゃんは自分が何者だかわからない。だから、答えをくれそうなたとえや美雪に体当たりでぶつかったんだと思う、無自覚的に。

自覚的な行動や考えと、無自覚的な行動や考えの違い。これは思春期とか10代関係なく、全ての年代の人間にあることだと思う。
私は何者なのか。生まれて50年経ってしまった私は、その問いにもがくことはない。わかった気になってるだけなのかもしれないし、そういう問いを自分に向けなくなっただけなのかもしれない。
こうやって全力でジタバタする愛ちゃんには、痛ましさと憧れ、両方の気持ちを抱いてしまう。
湯っ子

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