あまり、女優さんに心惹かれる事はないのですが。
好きな女優さんというと、「鈴木京香様」から上書きされていない（笑）
そんな私が、最近、気になっている女優さんがいまして。
初めて観たのは、「彼女が好きなものは」という作品でした。
で、今回、この作品で主演という事で、
観てみたんですけど。
正直、この女優さんが逸材である事を、再確認致した次第です。
「悪人」という作品で、満島ひかり様の演技に目を奪われた時と
同じくらいの衝撃でした。
綿矢りさ原作を、
けっこうな昔に読んだので、
内容はあんまり覚えていないけど、
綿矢りさらしい作品だなったという印象。
そういう意味では、
綿矢りさ独特のヒリヒリした世界観が、
見事に映像になっていたんじゃないかと思う。
原作の映像化という点では、及第点。
そこへ、主演3人の演技・・・・特に、山田杏奈さんの強烈な演技で、
この作品は、飛躍的に良質な作品にレベルアップしている。
高校生という難しいお年頃。
全てに長けていて、欲しいものは全て手に入ると思っている自分だけの世界。
その聖域が脅かされる事を、
認めず、固執し、
抵抗して足掻いて、
最終的に、それが錯覚であったと、受け入れるまでのお話。
なかなか理解し難い心情を、
山田杏奈さんは、
見事に演じていて、ビックリしました。
目の動き、ちょっとした表情が
全て繊細で、
その内面まで照らす演技力は、
凄いと思います。
内容が好き嫌いがあると思うし、主人公の行動が意味不明過ぎて、
ホント、演じる人がイマイチなら、
とっとと撤退してもおかしくないけど。
とにかく、山田杏奈さんの演技で、最後まで引っ張ってくれる。
この吸引力、目力、存在感は稀有。
監督さんも若手で、綿矢りさ原作を心酔し、
この作品を映像化したいから、
映画監督になったというだけはあって、
意気込みが感じられる。
独りよがりなバカ女のバカな話や、
女性同士の濡れ場など、
衝撃的な見せ場メインの話に
なりそうな所を、
美しい映像、折り紙や手紙、
揺るぎないキャラクター設定で、
原作に基づいたテーマを、
しっかり確立しているように思う。
何よりも、主要3人を決めたキャスティング力が秀逸。
山田杏奈さん演じる愛に、
翻弄される2人を、
作間龍斗さんと、芋生悠さん。
どちらも良かったです。
作間龍斗さんは初めて観ましたが、
演技は粗削りな感じがあるけど、
すごく雰囲気がありました。
芋生悠ささんも、木村多江さんのようで、
この方25歳なんだけど、この役にキャスティングした気持ちが分かる！！
それぞれの母親役も、田中美佐子さん板谷由夏さん・萩原聖人さんも
良かったです。
（萩原聖人さんは、イマイチだった・笑）
☆以下、ネタバレあらすじです☆
（一部妄想あり）
思い余って、愛は、たとえに告白するが、
簡単にフラれてしまい、ショックを受ける。
たとえを諦めきれない愛は、たとえの彼女である美雪に近付く。
美雪は彼氏がたとえである事、
キスすらせず、
専ら手紙交換を行っている事、
手も繋いでいない・・・と告白する。
愛は、美雪の中に潜む欲求不満を感じ取り、彼女を誘惑する。
愛は、たとえに、
美雪とそういう関係になった事を告げ、
自分のものになってと言う。
どうしたら、君のものなる？たとえの問いかけに、
「抱きしめて、キスして・・・」
言われたように、
事務的にハグしてキスするたとえ。
「キスしたんだから、笑えよ。
貧しい笑顔だな」
再び、こっぴどくフラれた愛は、
「たとえが、東京の大学に受かったら一緒に行く・・・」と話す美雪に、
自分は、たとえが好きでその為に美雪に近付いたのだと告白し、謝罪する。
「愛ちゃん、怖い・・・
全然悪いと思ってないよね」
その行為よりも、嘘を見破られた事に茫然となる愛。
自分の裏切りに、泣き叫ぶ美雪の姿を見たかった。
自分の存在で、発狂するたとえや、美雪を見たかった。
けれど、たとえは、愛の笑顔が貧しいと言い、
美雪は愛の嘘が、怖いと言った。
自分では、2人をゆさぶれない・・・・その事実に、敗北感が募る。
その敗北感は、愛から自信を喪失させ、
気力をなくさせた。
自分への嫌悪感が、彼女自身を廃退させていく。
ある日、必死の形相で走る美雪を見て、愛は、声をかける。
事情を聞くと、たとえが東京の大学に受かったが、DV父がそれに
対して怒っている。
彼の身の危険を感じて、たとえの家に向かっているのだという。
愛は、咄嗟に一緒に行く・・・と走り出していた。
家に行くと、殴られた後のたとえが、正座していた。
「彼を東京の大学に行かせて下さい」と言う美雪。
喚き散らす父親は、息子を自分のもののように扱っていた。
その姿が、彼に執着する自分と重なった愛は、
たとえを縛る父親（と自分自身）を殴り、
2人を連れ出した。
「話し合って分かる相手じゃないでしょう！」
愛はそう言い、たとえも、「そうだ」と同意する。
3人は、その日ホテルで一夜を過ごす。
一晩中、たとえの傍で、彼を労わる美雪の姿を、
愛はうっとりと眺める。
愛には、美雪が聖母マリアのように見えた。
自分の愛情とは違う、純粋で美しい愛が、そこにはあったのだ。
文化祭の為に作った、
折り鶴で出来たサクラ。
愛・願い・執着・嫉妬・・・あらゆる感情を封じ込めた折り鶴。
折るという行為は、祈る事と同じ・・・・。
愛は、その木を蹴とばした。
そこに、たとえが現れた。
「美雪を好きな理由を、同じ世界にいるからだと言ったよな。
違う世界にいたから好きなんだ・・・でも、
彼女の病気を共有出来ていると思っていたかも知れない。
同じにはなれないのに・・・」
美雪への愛情に、少しの不安をこぼす、たとえ。
愛は、「私は、たとえ君のためなら両目に針をさせるよ。
でも失明したら、そばにしてね・・・？
それで、美雪より私を好きになる？
ならないでしょう。だから、悩まないで」
愛は、そう言って、たとえの気持ちに別れを告げた。
愛は、手元に残っていた折り鶴を、ひらいていく。
封じ込めた、純粋な恋心も、醜い感情も、
解放していく。
愛の机の中に、美雪からの手紙があった。
「触れられる嬉しさを教えてくれてありがとう。
自分勝手で我慢など知らない愛ちゃんが、
打算でも、私の前で辛抱強く振る舞い続けたのなら
ほんのひと時でも、心をひらいてくれたのなら、
私はその瞬間を忘れる事は出来ません」
愛は、美雪の元へ走り出していた。
そっと、美雪の手を握り、
「また、一緒に寝ようね・・・」そう告げた。
長いので、感想はブログにて。
