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エル プラネタの39のレビュー・感想・評価

エル プラネタ(2021年製作の映画)
5.0
SNS映えを常に気にする現代の女の子を描いたファッション映画で、「かわいかったー♡」という感想を言えるような作品だと思って観たら大間違い。

この世界に生きる誰もが、得も言われぬ将来への不安感を抱いて生きていると思うが、それが悲壮感0で淡々と描かれ、最後のクライマックスには「さぁこれからどうする?」と漠然と投げかけられた終焉を見せられ、心が追い付かなかった。まさかこんなにメッセージ性のある作品だったとは、アマリア・ウルマン恐るべし。

パンフレットを買って読むと、彼女が映画監督ではなくてアーティストだということがよく理解できた。母マリアが実際にアマリアの母で本作が初演技だったこと、モノクロは狙いではなく予算と撮影状況の都合上仕方なくだったこと、初監督作でありながら予算内で用意できる身の丈にあった素材で最大限に表現できるのはこれまでのアーティスト活動が存分に生きていると思う。インタビューを読んでいても特に映像表現に固執しているような様子でもないし、あくまでも表現方法のひとつなんだろうなと感じた。カメラワーク、撮影方法、構成どれをとってもとてもシンプルで、それによって彼女のメッセージがより強烈に画面に表れている。iMovieで編集したようなシーン代わりのエフェクトも最初は違和感を感じたけれど、内容にとてもあっていた。

彼女の等身大の育ちからテーマを得ているのもとても好感が持てるし、美人で聡明で才能もあって成功していて…という自身を冷静に、そしてとても客観的に見つめている視線も面白い。SNSを武器とした作品を発表しながら、SNSにあまり興味がなさそうな様子もなんだか強い。

いろいろと素晴らしすぎて、すでに2022年のベストが出てしまったようでクラクラする!次回作はもちろん、映像作品以外の作品も楽しみすぎる。アーティスト、アマリア・ウルマン全力で推します。
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