よしまる

エル プラネタのよしまるのレビュー・感想・評価

エル プラネタ(2021年製作の映画)
3.9
 なぜかミレニアル世代、ジェネレーションYという文脈で語られているアマリアウルマンの監督デビュー作。
 アルゼンチン生まれスペイン育ちという経歴を持つ彼女は、インスタグラマー、写真家、アーティストとさまざまな顔を持ち、なるほどそうして見ればまさにデジタルネイティブ世代を体現するかのような活躍だ。

 レディガガやリアーナ、テイラースイフトあたりが同世代ということになるけれど、同じ時代なのにああいうセレブ勢とはまた違う世界線で生きている感じがして、それがとてもいい。

 貧乏で見栄っ張りな母親との二人暮らし(演じているのも実の母娘)。物欲大魔王が闊歩した消費世代の亡霊の如く、お金は無くても物は買うし万引きもする。お菓子を主食にし、人にタカることも辞さない。
 当時と違うのはその行動原理がSNSにあること。試着をインスタ投稿とか炎上スレスレの暴挙も、悪意の欠片すら無い。

 就職難や保障の不備などスペインの内情には疎いので分からないのだけれど、このデジタルネイティブ世代がそうした状況に追い込まれたら何をやらかすのか、オシャレすぎる一丁羅に身を包み、たくましく生きる母娘には半ば呆れながらもなぜか優しい眼差しで微笑ましく見つめてしまう。

 だからと言って痛烈な社会風刺や、ましてや自虐的なライフスタイル批難でも全くない。モノクロで撮られたアーティスティックな映像と、したたかに生きる母娘の、これはれっきとしたコメディ。
 ただニヤニヤしながら観ていればいい。それが出来ないなら観るな。
 そう言われている気がしたので、そうしたw