ゆう

偶然と想像のゆうのネタバレレビュー・内容・結末

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

すごいな。素晴らしいと思いました。
濱口龍介って、自分に言わせればNTRの監督なんですよね。それは『PASSION』『天国はまだ遠い』『ハッピーアワー』『寝ても覚めても』『ドライブ・マイ・カー』などなどを見ればはっきりする。

近作の『ドライブ・マイ・カー』は自分は全くノれなかったんですが、それはNTRが実質男の自己憐憫を強化する装置にしかなっておらず、NTRそのもののサスペンデッドな楽しみを損なっているからなんだと気付きました。

また、『ドライブ・マイ・カー』は普通車という場所の性質上どうしても切り返しショットが多くなり、大半のダイアローグが画としてはモノローグ的になっていたところも不満でした。今作は前作の不満が払拭され、とてもサスペンスに満ちた物語を3本も拝むことができました。

特に第一話『魔法(よりもっと不確か)』が出色ですね。純粋にNTRど真ん中の話を作ったのはもちろん、前作とも対照的な車での長回し会話シーンがとても楽しかった。イタリア式本読みを通じた若干ぎこちない会話シーンが多い中で、普通にガールズトークを見ることができて新鮮。その後の男女での会話も、濱口龍介独特の論理で展開するダイアローグが楽しめるとてもいい修羅場だった。「偶然と想像」のテーマを最もよく体現する作品だったように思います。

第二話「扉は開けたままで」は、研究室での会話のぎこちなさがほとんどブレッソン映画の域に達していました。ヒロインの森郁月さんは役の性質上まだしも、渋川清彦については朴訥すぎて、もう少し自然な方が個人的には良かった。

第三話の『もう一度』は、河合青葉と占部房子の常連組による作品ですが、濱口映画で役がポジティブなメッセージをストレートに発するのが個人的にかなり意外でした。NTR要素が一番薄いですが、部屋での切り返しでゆっくりと近づいてゆく河合青葉がエロくてよかった。

個人的に一番感心したのは、全ての作品でダイアローグを撮るときに両者をちゃんと画角に収めて長回しで撮っていたこと。そしてここぞという場面でちゃんと切り返すこと。素晴らしい。

これからも観続けていきたい監督の一人です。
ゆう

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