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偶然と想像のレのネタバレレビュー・内容・結末

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

俺氏大号泣不可避


一本目の軽さ、ショットの短さが新しい風を感じさせる。ロメールやキェシロフスキの短編のような雰囲気で、これまで「名作だがあまり映画らしくはない長編」を作り続けてきた濱口竜介がヨーロッパ映画のマナーに則った収まりのいい小品。

序盤の会話はかなりかったるいのだが、濱口作品におけるかったるいパートはその先へ登っていくためのステップなので我慢できる。


二本目は奇妙ではあるものの、考え抜かれた台詞の迫真性が光る作品で、性的な紐帯を悪意が渡っていく様子が楽しい(し、濱口竜介っぽい)。
私はよく「江口洋介はどうしても医者に見えないから医者の役をやらすな」みたいなことをいうのだが、渋川清彦演じる大学教授は松岡正剛のようなインテリの気配を感じさせて絶妙だと感じた(要するに江口洋介の演技力の問題だった!)。

そして濱口作品の真骨頂、『もう一度』。泣く。濱口竜介のエッセンスが凝縮された会話パートが続く。
これまで運命性や失踪、船出、妊娠、阪急電車などの隠喩で置き換えられてきたテーマがかなりはっきりと言語化され、(たとえば「心の穴同士でつながっている」という言い方で)、観客の意識はここまでの物語全体に遡行することになる。

あと、河井青葉さん(ファンなのでさん付けしてしまう)の演技が素晴らしい。映画の世界では、たとえリアリズムでも現実からは少し外れた奇妙なことが起きるものだが、彼女の演技には、「妙な事態に巻き込まれたときに、常識的な感覚を持ったまま判断を保留する態度」が含まれており、この作品は彼女のおかげで嘘くささを回避している。『PASSION』組の同窓会なのもエモい……。


しかしいちばんエモいのはピアノ演奏:菊池葉月のクレジットであり、エンドロールで持っていかれたのであった、、




俺たちはやるよ。
レ