まちまおまるこ

偶然と想像のまちまおまるこのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.8
不思議な映画だった。
観ている間は、退屈と違和感を覚えた。特に第一話最初のタクシーの中ののろけ話。へんてこな棒読みのお芝居が長い。早く終わらないかな、と思いながら、映画館のシートにぐたっと頭を載せて、リラックスして画面を眺めていた。それが、タクシーの向きが変わったところから、キキ―っと車の向きが変わったように、不穏な空気が動き出した。すご。
第二話は、これ、私のこと?と思いながら観る。
男子学生が自分みたいだった。自分、こういうところ、ある。
女性も、もろ自分みたいだった。情緒的で流されやすくて、結果酷いことを自分が引き起こすという。
大学教授も、自分ぽい。わかるー。
メールが送信されていくところにズームがあたるのが何故?と印象に残って、それがあとで思い返されて怖かった。
第三話も、自分のことのような。私は髪の短い方ね。仙台の駅前や街並みも良かったなあ。
ただ、観終わった直後は、全体的に素人臭さのような違和感が残って、これを12月の忙しいときに時間つくって観るべきかね、とも思った。
しかししかし、じわじわ来るね、この映画は。

年末に、実家の父が倒れて急逝。明け方の電話、喪服をスーツケースに詰め、仕事の段取り(人に振りまくる)、新幹線で実家に帰り、遺体との対面、通夜、納棺、火葬場、告別式、終わった後の母の顔。それらを見つめながら、何故か『偶然と想像』のワンシーンみたいだなとぼんやり思っていた。

『ドライブ・マイ・カー』と違って何度も観たい映画ではないけれど、繰り返し思い出しながら一緒に生きていく映画なのかも。
2021年12月に観たことが、自分にとって大きな意味がある映画。
まちまおまるこ

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