Shin

偶然と想像のShinのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.5
偶然 ・・予期しないことが起きること。
想像・・ 実際には経験していないことを思い描くこと。
あらためてこうして書き出してみると、成る程これは映画との相性はぴったりだな。

第一部から第三部まで「偶然と想像」が展開されるのだが、第一部での「想像」のシーンはカメラワークが明らかに変化しわかりやすかった。第二部の「偶然」は"佐川急便"が来たということかなあ😊第三部の「想像」はゴッコ遊びをしているようで面白い。

作品の特徴として、とても演劇のようなつくり方をしているなと感じた。 公式サイトにある舞台挨拶レポートなるものを読んでみると。

第一部でつぐみ(玄理)がある男性について語るシーン。作品では使わないのに、出会いのシーンも脚本を書き、実際に撮影もしたそうだ。どおりで玄理の語りが巧みな訳だ。古川琴音と中島歩はリハーサルの本読みにおいて、感情を入れずに台詞を言い、何回もストーリーを流したと語っている。

第二部では、甲斐翔真は監督から自分の胸に"鈴"があると思って、相手の台詞を受けて"鈴"がなったら、台詞を返してと監督から言われたとのこと。

第三部にしても、リハーサルが10日間あり、監督と一緒に本読みをしながら台詞を覚えるという作業をしたそうだ。普通の撮影現場ではまず考えられない。

僕も俳優の端くれなのでわかるのだが。俳優は感情を表現しようとして相手の台詞をきちんと聞かずに、台詞を返してしまうことが多い。これでは自分勝手な演技となってしまう。しかしリハーサルの本読みにおいて、台詞をあえて棒読みし、相手の台詞をしっかり聞くことができれば、自然な反応として台詞を返すことができる。しかも本読みしながら台詞を覚える時間がもらえるとはなんという贅沢。監督がいかに俳優の為を思い、良い演技を引き出す方法を取っていたかがわかる。

このようなリハーサルや撮影時間を確保する為、小規模な撮影スタイルにしたそうだ。ロケーションや登場人物が少ないのはそういうことだったのか。監督はこのスタイルをライフワークにしたいとも言っているらしい。

映画でも演劇でも物語の設定に少々無理があるように思えても、俳優が嘘のない演技すれば、それは真実となる。

恋愛にしろ友情にしろ、神のいたずらかちょっとした偶然により、全く違った人間関係になることはよくあることだ。その悲喜こもごもを丁寧に描き、人生の面白さを伝えてくれる濱口監督の手腕が冴えわたった素晴らしい作品だった。






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