QTaka

偶然と想像のQTakaのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
3.8
物語は、日常の中に、突然生まれる。
涌き出ずる会話の波に、耳を傾けてみる。
スクリーンには、不思議な姿が浮き上がってくる。
そこには、演じる役者の姿は無く。
あるのは、生きた人間の真摯な姿。
濱口監督の紡ぎ出す世界がある。

第一話:魔法(よりもっと不確か)
一人の女性のタイムラインに幾つかの要素が絡みつく。
友人の会話に浮かんできた元カレの姿。
その男を前にして、時を巻き戻しながら、言葉の応酬が始まる。
女と男と女の関係が、勝手に渾沌としていく。
ついに友人と女の前に男が現れ、妄想が涌いてくる。
数日のタイムラインと、2年を隔てた思い。
友人と元彼を置き去りにして。
渋谷の街は、いつも工事現場に囲まれている。
スクラップ&ビルド
恋もまたそうやって繰り返されるのか。
今この瞬間も、また次のタイムラインが始まっている。
物語の中で、随分と揺さぶられた割に、後味の良い終わり方だった。


第二話:扉は開けたままで
渋川清彦の会話劇が光る。
母親であり、女子大生の教え子との会話がなんとも奇妙で面白い。
この空間、この時間、この会話が、最高に愛おしい。
会話劇なのに、会話が全然入ってこない(笑)
それくらいイイシーンだった。
(2回目鑑賞必須)
気がつけば、ラストシーンでは、女と男が再び出会う。
ん?この結末は?
振出しに戻る?
いや、立場が入れ替わるのか…
.
教授と女子大生の会話シーンを再び確認して見た。
その会話は、とても大切な話しをしていた。
作家の言葉を紡ぐ姿勢は、とても魅力的でリズムを感じた。
その作家の書き下ろした小説の場面はかなりいかれていた。(笑)
そして、その流れで大学生に諭した生き方は、この後彼女が生きていくための道しるべになったのだろうか。
そんなことも考えてみた。

第三話:もう一度
知らないけど、ずっと知っていたかのような。
そんな人との間で交わした言葉。
考えて、言葉にする。
「あなたがどう思っているのか?」
「思いを言葉にする」とは、つまり”告白”ということか。
会話が会話を呼び込む展開に飲み込まれた。
.
劇場での上映と平行して行われたオンライン上映(Reel)で鑑賞。
映画館、行ってないなぁ〜
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