濱口竜介作品の中では軽やかな雰囲気を纏う力の抜けた映画だが、人と人との間で発生するどうしようもない“愛”とそこにポツンと残る“希望”を３編通して、鋭く描かれていた。また、1対1の関係で交わされる会話は真に迫るとしか言いようがなく、そして何故か心地よく感じる距離感なのだ。これが、昨今連発されている「リアル」な恋愛映画たちと一線を画す豊かさなのである。もちろん、それらの作品が凡庸と言いたい訳ではないが、今作の前では平伏するしか術はない。そのくらいの名状し難い映画的な魅力と、濱口の持つ人生観と積み重ねてきた(才能もあるけど)スキル故に、映画史に残るシークエンスと対話がここに誕生してしまった。大傑作。
