クロスケ

偶然と想像のクロスケのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.8
本作に限ったことではありませんが、濱口映画は本当に言葉がよく聞こえます。俳優の発する台詞がすーっと頭に入ってきて、気づけば夢中になって彼らのやり取りに耳をそばだてているのです。

それは、あらゆる現場でいろんな関係者が証言している濱口監督特有の例の演出方法の効果であるだろうし、それに導かれる俳優たちの類稀なる才能と魅力によるものでもあるでしょう。
それに加えて、録音技術を含めた音声の処理によるところも大きいと思います。繊細な声の強弱を忠実に表現しながら、周囲の環境音を微かに含んだ耳に心地よい声が、台詞を、言葉を豊潤に響かせています。

『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグのような古川琴音のカメラ目線。(或いは目線の先にたまたまカメラがあっただけなのかもしれません)
涙を流す森郁月を捉えた逆光気味のショット。向かい合う占部房子と河井青葉のツーショットに迸る瑞々しさ。

『寝ても覚めても』『ドライブ・マイ・カー』など有名原作を元にしたメジャー作品が続く濱口監督ですが、本作のようなこじんまりとした小品を定期的に撮ってほしいですね。
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