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偶然と想像のILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.5
原題『偶然と想像』 (2022)

監督・脚本 : 濱口竜介
撮影 : 飯岡幸子
出演 : 古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉、他

“偶然”をテーマに、人々が徐々に普段の日常からはずれ、新しい自分を発見する様子を、親友同士、教授と生徒、同窓生の3本の短編作品で、対話がやがて変調し、人間の本性や人生の断片を浮かび上がらせるオムニバス映画。

「会話劇」映画。

とても面白かったです。傑作。

大小それぞれの"偶然"が映画内でダイナミックな運動、映画の推進力となり、その"偶然"が、通常するはずもなかった会話をするうちに言葉がお互いの「核」に触れる瞬間、幸福の瞬間、得体の知れなさが現れる瞬間、を見事に映し出す、抜群に面白い脚本とキャスト陣の演技が素晴らしかったと思います。
濱口竜介は人間の中にある得体の知れなさが表出するセリフを紡ぎ出すのホント巧いなぁと改めて思わさせられますし、いわゆる「リアルな演技、セリフ廻し」ではない「人工的なセリフ廻し」の時に「リアル」なモノ、人の核心に迫っていく作り、または、劇中の人物が別の何かを演じた時に「リアル」な何かになるという作りは、濱口竜介独自の語り口、映画文法であり、世界で評価されるのも納得の映画作家であるなぁと。凄いし、怖い…

個人的には、ズーム・インで画角を狭め、ワンカットでふたつの時空があるように見せた第一話のカメラ演出が印象的でした。

「これはリアルである、これはフィクションであるという境界がはっきりしない領域に、演技が達する瞬間がある。それをそのまま記録することがカメラには可能なのだ」
- 濱口竜介 -
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