むるそー

偶然と想像のむるそーのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.8
人が本来持っているのは現在という時間軸だけ。でも記憶を通して過去を、想像を通して未来を知覚できるがゆえに、過去と未来の自分が現在の自分と同居している。その中には、何かに絶望した自分もいるはず。

3篇とも、偶然が目の前に現れるのを想像し、夢想していた。1篇目は好きな人を傷つけることしかできない過去の自分へ、2篇目は自身の特性について抱えてきたネガティブな認識へ、3篇目はあの時言えなかった後悔と今もこの先も抱え続ける絶望へ。3篇それぞれの偶然は、現在の出来事が過去にも未来にも干渉し、現在という時間軸にいない自分を救っている。

最近見た「異人たち」も偶然が過去の自分を救う話だし、というか人生ってそういうことの連続なのだと思う。僕の中にいる、過去の後悔や未来の絶望が、いつかの偶然によって救われる日も来るのかもしれない。その希望にひとまず救われて泣いてしまった。
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