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プライムタイムのmのレビュー・感想・評価

プライムタイム(2021年製作の映画)
2.5
言えないなにかがその人物の本質なのではないかと思った作品。言いたいことを言えない、言いたいことを言わない、そんな情緒不安定さは誰の心の中にも存在するだろう。人間の心の機微を感じられる。

『聖なる犯罪者』で虜になったバルトシュ・ビィエレニアさん主演。彼目当てで観ました。やはり彼はえげつない演技力の持ち主だ。
今作正直、というかかなり面白くないの笑
なんだけど、彼の演技力のおかげでセバスティアンに共感できるというか、できてしまうというか…。目力がやはり半端ない。煙草もとても似合い、やさぐれ感がいい。

1999年、大みそか。生放送中のTVスタジオに武装したひとりの男セバスティアン(バルトシュ・ビィエレニアさん)が侵入する。司会者を人質に立てこもった彼の要求は、番組で自分の声明を放送することだった。

ストーリーはかなり単純明快。なんだけど、セバスティアンの目的・生放送で声明を発したいほどの動機が語られなく消化不良に陥る。また、警察が少々お間抜けで、んなわけあるか?と突っ込みを入れてしまいたくなる。

ただ、セバスティアンの境遇が語りでなんとなく理解できる。どんな話しをしたかったのかは分からないが、《なにかを語りたかった》という一点において強烈なまでに共感してしまった。

スピードワゴンの小沢さんが発言した

〈何をしゃべれるかが知性で、何をしゃべらないかが品性〉

という名言。なんでも語れてしまう今の時代を的確に表した発言だが、なら《何をしゃべれないか》という項目もありではないかと思うんだ。しゃべれないなにかはその人のもっとも深い場所にある真意ではないだろうか。どうしても喋りたくて堪らない、けれども喋れない。誰もが一度はこのもどかしい気持ちを持ったことがあると思う。

セバスティアンは、やり方を間違えたけど喋りたくて堪らないそれを行動に移した。そして、敢えて喋らなかった。やるせなさを感じる行動だが、反面、司会者、警備員など人の優しさを感じ、語らなくてもいいかもしれないという心情を持ったセバスティアンもいる気がした。あの表情が忘れられない。

また、今作はストックホルム症候群の要素があるがまたそれとは違うのではないだろうかと感じた。オープニング、警備員が、落ちつけ、とまるでセバスティアンがこれから行うことを承諾していかのような言葉をかける。なにかそこにあたたかさを感じた。
また、女刑事もラスト少し気落ちしているようで、助けたかったのに助けられなかったことを悔やんでいるように見えた。

ストーリーは面白くない。
が、好きな人は好きだろう。私は共感した。
とにかくバルトシュ・ビィエレニアさんが最高なので、彼が好きなら観て欲しい笑

ストーリー : ★☆☆☆☆
映像 : ★★☆☆☆
設定 : ★★☆☆☆
キャスト: ★★★★☆(バルトシュ・ビィエレニアさんに)
メッセージ性 : ☆☆☆☆☆
感情移入・共感 : ★★★☆☆
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