開明獣

対峙の開明獣のレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
1.0
騙されるな!!これは宗教勧誘タイトルだ!大川隆法が作ってるのと同じ路線!

原題のMassは、キリスト教では、ミサの意味。但し、本作の舞台は、エピスコパル会派の教会なので、カトリックのようはミサは行わないはず。

エピスコパリアンは、米国の教会会派の中で、もっとも寛容で自由な会派。カトリックとは違って、LGBTも認めている。

キリスト教でもっとも保守的なカトリックのもっとも大事な儀式を題名にあて、もっとも進歩的な会派の教会をわざわざ舞台にする。これは何を意味するのだろうか?あまねく、キリスト教全体をアピールする狙いがあるのではないだろうか?

高校で起こった生徒によるテロ事件の加害者の両親と、被害者の両親が6年の歳月を経て、事件と向き合い、お互いを剥き出しにして語り合う。役者たちの芝居は素晴らしいの一言に尽きる。脚本もよく出来ているのに、どこかひっかかるのは、何故だろうか?

一神教であるキリスト教は、神こそが絶対の存在である。自分に理不尽で不条理なことが起こっても、たとえ自分の身内が残忍に殺されたとしても、全ては「すべては神の御心なのです」「神の御業は、私たちの考えの及ぶところではありません」で済まされてしまう。日本人は、よくこのキリスト教の"赦し"という概念がわかってないと思う。全てをいるはずもない絶対者に任せて思考停止になってしまう危険性がある(良い方向に働くこともなくはないが)考え方だ。

科学を否定し、ダーウィンの進化論を認めず、唯物論を歪曲・濫用し、少年を性愛の対象とした虐待事件が明るみにでるなどして、近年ではキリスト教から信者は若い世代を中心にどんどん離れていっているという。

題名、教会、宗教画、手製のステンドグラス、聖書からの引用を用いたポスター、讃美歌、意味ありげな台詞、などなど、小道具は完璧に揃えてあった。考え過ぎなどではなく、あまりにも揃い過ぎていると言っても過言ではない。エンドロールのクレジットでの謝意も、宗教団体の名が連なっていた。

重犯罪率が先進国の中では突出して高い米国。加えて分断からくる閉塞感の中、正解のない難問を解決出来るのも、全てを許せるのも、神の御業だとデモンストレーションしているようだ。日本でも某宗教団体が、巨費を投じて、勧誘映画を作って上映しているが、それと同じ類いだと感じた瞬間、それまでの感動が一気に冷めた。

人が人を許すのであり、神が人を赦すのではない。腹の底に重い石を置かれたような気持ちで劇場を後にした。
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