エイコ

対峙のエイコのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.1
音楽もなく、ただただ対話形式で綴られている作品。

原題"Mass"は"Mass Murder"のことだろう。
学校で起きた銃乱射事件の加害者である両親と、被害者のうちのひとりの両親とが、とある教会の一室に集い、思いの丈をお互い吐き出していく。

加害者が私の子だったら
被害者が私の子だったら
完全に傍観者である鑑賞者の私は、どちらの親にも深く感情移入してしまう。

加害者の両親がいっそ極悪人で、恨むに値する人たちだったら、感情をぶつけられるのに、彼らは良識人だった。
お互いの持っていきようのない感情の矛先がどこに向かうのか、とてもやるせ無い気持ちで見ていた。

やるせ無い気持ちを抱えたまま見終わったが、重ねられていく対話の後半で少し救われたというか、互いの気持ちが重なったところがあって、見る人によっては疑問に思うところなのかもしれないが、私にはとても納得がいった。

周りが引くほど泣いたと思う。

忘れられない一本になった。






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以下は作品後半の、大きく場面が転換することについて触れています。
あと、気持ちの整理のための自分語り。
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「ゆるす」ことについて考える時、30年ほど前にアメリカにホームステイしていた時のことを思い出す。

お世話になっていたファミリーの母親はかつて性暴力に合い、子を孕んでしまったが、生む選択をし、家族として迎え、大切に育てていた(私の英語理解力がまちがっていなければ、そういう話だったはず)。
なんて強いひとなんだと当時衝撃を受け、今でも鮮明に記憶の中に残っている。
 
殺人事件の加害者を被害者が「ゆるす」ことはきっと「怒る」とか「悲しむ」ことに比べるととてもハードルが高いことだと勝手に想像する。

作品内でもゆるすことによって、息子を失ってしまう気がする(概要)と言っていて、諦めると同等の意味に取られがちな気がするのだけど、そうではなくて、全てを受け入れてこれからを見据えるような感じなんだろうな。達観するというような。

想像を絶する悲惨な出来事が起きた時に、私だったらどうするだろう…

考えることをやめないようにしたいな。
エイコ

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