ベイビー

対峙のベイビーのネタバレレビュー・内容・結末

対峙(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

丸テーブルと四脚の椅子。その用意された席で対峙するのは加害者側の親と被害者側の親たち 。6年前に起きた高校無差別銃乱射事件の加害者の親と加害者の親が、時を経てある教会の一室で話し合うことになります…

この物語はある一室を舞台にした、ワンシチュエーションの会話劇。序盤はなかなか状況が飲み込めず、抑揚のないまま物語は進んで行きます。

簡単に邦題の「対峙」の意味を捉えれば、違う立場の親同士が対局して向き合う状況を指すのですが、しかし本当に向き合うべきなのはもう書き換えられないあの日の過ち。それとあの頃なにも出来なかった不甲斐ない“自分”。ということになるのでしょう。

悔いても悔やみきれない過去。事件の真実を求め過去を振り返ったとしても、結局答えは見つかりません。頭の中で繰り返される「なぜ?」に狂わされながら、記憶に残る息子と対峙したところで、壊れた心はもう元に戻らないのです。

きっとハート形に型どられたステンドグラスは、そんな傷ついた人たちの心の形を表しているのでしょう。こうしてひび割れ、歪になりながらも、ステンドグラスは光を受け止め、キラキラと輝きを放ちます。

その光を導き出すのは“赦す”という気持ち。

過去に傷ついき悲しみを背負った人は、正しく未来に歩むことさえままなりません。だからこそ、人は“過去”や“他人”や“自分”を赦すことで、分厚く重なった雲を切り裂くように光の道筋を作り、心を明るく取り戻しながら、自分を明日へと繋げます。

この作品はワンシチュエーションと地味ながらも、そんなメッセージが込められたおとても良い話でした。本当に脚本と構成力が素晴らしい。あと、俳優さんたち全員がとても見事な演技を見せてくれました。
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