キ

対峙のキのネタバレレビュー・内容・結末

対峙(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

人生の意味とは世界を変えることではない
ひとの人生の意味とは、他人にとっては些細な日常のこと
多くの人々の人生を破滅させ、多大な影響を齎した青年を産んだ母親による言葉が重い

自分の中の常識で「理解できない、許せない」と思った相手の事を知ることで、感情と思考に変化が齎され相手を許すことに繋がってくるとは聞き飽きた説教ではあるが、実際そうなのだろうなとも感じる

「犯行に及んだ理由がどれだけばかげた理由であっても、被害者は加害者の言葉を必要とする」と以前見たが、本人が生きていなければそれも叶わない

立場は違えどこどもを喪ったという共通点があり、それが最終的な結果への足がかりになったのかなという気もする

他者を赦すには生じた感情を感じきることが必要になる
思考や物語を紡ぐのは嫌になるほど自身の感情を感じきったあとにするべきことなのだろう
理性的であろうとすればするほどそこからは遠のき、自身の悲しみを水に流すことはできない

故人が死の間際なにをしたかで人生の意味合いが変わってしまう、という点に『空白を満たしなさい』(平野啓一郎著)を思い出した

自分が加害者家族になったとして、非難を浴び続ける中まず被害者へ謝罪に行こうと思えるか
自分が被害者の側になったとして、相手を糾弾せずにいられるか
どちらも自信がない

事件当事者ではない者が彼らに対してできることは事を知ったうえで静観することだけな気もするが、正解はわからない

修復的司法に関心があったがその後掘り下げられていなかったため、それを思い出す良い機会となった
キ