雨丘もびり

対峙の雨丘もびりのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
5.0
【κάθαρσις(=catharsis)】
銃乱射事件の被害者遺族と加害者の両親が話す。
「私たちの痛みが分かるか!」「分かります」「そうじゃなくて」「私たちにどうしろというのですか?!」的な、もう...ぁぁぁあああ通じねぇええええテメエぇええーらぁああああ~っていうもどかしさやりきれなさ苛立たしさ情けなさで頭痛目眩吐き気。どうして欲しいかわからないけど何かして欲しいからいがみ合うやつ、この対談の前にきっと夫婦間でもやってるはず。正直、誰に対してかわからない殺意も沸きました。あのテーブルの上に花篭でなく拳銃があったら...って頭をよぎってゾッとした(怯)。
でも被害者遺族が、加害者両親に「兆候はなかったのか」「何故精神医療の治療を途中で止めたのか」的な詰め方をしていくうちに、いやそりゃ気持ちはわかるけどどんなに家族間(例え他人よりは立ち入れる関係)であったとしても息子の頭の中まではワカランでしょや。。。って被害者サイドを諫めたくなる気持ちも湧き上がってくる。だから余計にツライ。トゲトゲした言葉の列がとぐろを巻いてのたうちまわり頭の中をガリガリ削る。
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そんな、仲介人なしの激情のぶつけ合い、「どうして欲しいのか」の押し付け合い、答えの出ない平行線地獄の議論の果てに、あたし「人間ってスゴイ」って心底感動できる結末に出くわしたよ。ヌルく無い希望の映画ってこと、そこは期待して観て良いと思います。
初監督作品でこの凄まじさ?!