キャッチ30

対峙のキャッチ30のレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.5
 とある一室で立場の違う者同士が集い、対話する。『12人の怒れる男』や『ブレックファスト・クラブ』で見られた光景だ。『対峙』も同じだが、先に挙げた2作と比較すると重苦しい。なぜなら、被害者家族と加害者家族が対面するからだ。

 アメリカの地方都市の教会の個室に2組の家族が集う。6年前、ある高校で生徒による銃乱射が発生し、10人の生徒が殺害され、犯人の少年も学校の図書室で自ら命を絶つという事件が背景にある。今回、セラピストの勧めで息子を殺された被害者側の両親と事件を引き起こした加害者側の両親が対面することになった。

 本題を避けるように始めはぎこちない会話をする4人。やがて、加害者側の息子の話になると会話の応酬が繰り広げられ、静寂な空間に緊張感が漂う。怒り、悲しみ、後悔といった感情が言葉となって溢れ出る。それぞれの思いを吐露するうちに、いつしか4人は赦しという境地に辿り着く。

 監督のフラン・クランツは回想や音楽を削ぎ落とし、俳優たちの鍔迫り合いに焦点を当てる。地味ながら実力のあるキャスティングだが、取り分け被害者の父に扮したジェイソン・アイザックスが素晴らしい。ラストで聴こえてくる聖歌隊の練習も頑なな心を解きほぐす。